「気持ち落ち込む」 川南、北川で疑い
2011年1月29日
川南町と延岡市北川町の養鶏場で28日、高病原性鳥インフルエンザが疑われる鶏が相次いで確認された。新富、都農町など養鶏の盛んな児湯地域での続発に加え、遠く離れた大分県境での発生。出口の見えない状況に、関係者には驚きや落胆の色が広がった。
川南町の発生農場近くに住む60代女性は、発生農場の男性が昨年秋から「鳥インフルエンザが一番怖い」と防疫作業に明け暮れていたことを振り返り「あれだけ頑張っていたのに。口蹄疫に続き、まさか鳥インフルエンザも来るとは」と目頭を押さえた。
同町などのブロイラー生産農家でつくる「宮崎くみあいチキンフーズ」尾鈴地区部会(12戸)の江野本和豊会長(57)は「新富に出て5日たち、少し落ち着いたと思っていたらまた出た。気持ちが落ち込む」と肩を落とす。
飼育している鶏は生後20日程度で、出荷時期の50日齢はまだ先。いつウイルスが侵入するか気を抜けず、「毎朝鶏舎に入って中を見るのがきつい。これがあと20~30日続くかと思うと大変だ」と嘆く。
口蹄疫で町全体が甚大な被害を受けた同町。復興に歩み出した矢先だけに衝撃は大きい。町商工会によると、飲食業や旅行業、養鶏関連業を中心に再び“暗い影”が広がり始めているという。町商工会の津江章男会長は「1年に2度もなんて思いもしなかった。長期化すればとても耐えきれない」と表情を曇らせた。
延岡市の関係者は、発生地が大きく北上したことに驚きを隠せない。同市北川町内のブロイラー農家増田幹夫さん(55)は「周辺の養鶏農家も防疫は徹底してきた。発生は信じられない。どうすれば侵入を防げるのか」とショックを隠しきれない様子。
発生疑いの一報を受け、延岡市は防疫対策会議を開き、対応を協議。口蹄疫では徹底した防疫で感染を防いだだけに、同市農林水産部の浦田正一部長は「やるだけのことはやっていただけに残念」と肩を落とすが「迅速に殺処分を終え、感染拡大だけは防ぎたい」と話した。
発生農場近くの旧下赤小体育館では同市が現地対策本部を設置。午後9時すぎには北川町総合支所の職員20人が到着し、資材や健康診断の準備に追われた。同支所の甲斐睦央支所長は「北川町での(感染疑い)は初めてで、しかも大分県境という予期せぬ場所。被害をこれ以上出さないことが最優先」と力を込めた。
【写真】殺処分に備え、マイクロバスに乗り込む延岡市職員=28日午後、同市役所
■鳥取でも野鳥2羽陽性反応
鳥取県は28日、同県米子市で見つかった野鳥のユリカモメとキンクロハジロから、国立環境研究所の遺伝子検査で鳥インフルエンザの陽性反応が出たと発表した。
県によると、2羽の発見場所から半径10キロの監視区域内には18の養鶏場があり、約92万4千羽が飼育されているが、立ち入り検査の結果、異常はなかったとしている。
ユリカモメは19日、キンクロハジロは24日、米子市内の別々の場所でそれぞれ衰弱した状態で見つかり県が収容した。今後、鳥取大で確定検査を進める。
ユリカモメを発見した50代の男性は「ひっくり返って動かなくなったので、おかしいと思い県に連絡した」と話している。