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【緊迫 鳥インフルエンザ】(下)

2011年1月26日
■野鳥監視にも限界 防疫対策の再確認を

 渡り鳥によって海外から持ち込まれるとされる高病原性鳥インフルエンザウイルス。国や県は渡り鳥の監視強化など対策を講じるが、25日には鹿児島県出水市の養鶏場でも感染疑いが見つかるなど、ウイルスの侵入に歯止めがかからない。今回と過去の事例では養鶏場の防疫対策の漏れが確認されており、人為的なミスによるリスクを軽減することが課題となっている。

 環境省によると、渡り鳥の観測ポイントは各都道府県が選定し、昨年11月の調査では29道府県30市町で調査を実施。本県は宮崎市加江田川の河口が観測ポイントに指定されているが、宮崎市鳥インフルエンザ対策本部によると、河口近くに養鶏場が集中している地域はない。

 ふんを採取する県自然環境課は「加江田川河口は干潟が近く、ふん便を採取しやすい。観測場所が変わると、これまでの定点観測の効果が薄れる」と説明。しかし宮崎大農学部の後藤義孝教授(獣医微生物学)は「一ツ瀬川のように、近くに養鶏場がある場所での調査の方が効果が大きいのではないか」と指摘する。

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 野鳥の調査だけでは限界もある。日本野鳥の会県支部の前田幹雄支部長は「これまで、カモなどの渡り鳥がまとまって死んでいる現場を見たことがない」と語る。2007年に発生した旧清武町(現宮崎市清武町)の養鶏場に近い清武川でも、当時、野鳥のふんの調査が行われたがウイルスは検出されなかった。

 前田支部長は「(ウイルスを国内に持ち込むとされる)カモは河川近くの田んぼや水辺で餌を食べるので、養鶏場に近づくとは考えられない。何がウイルスを養鶏場に媒介しているのか、詳しい調査が必要ではないか」と話す。

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 1例目(宮崎市佐土原町)のウイルスは強毒性のH5N1型。島根県や北海道など全国的に確認されているものと極めて近いとされる。後藤教授は「国内全体にウイルスが広がっている可能性が高い。どこで発生してもおかしくない」と懸念する。

 本県における感染経路を調査する国の疫学調査チーム(チーム長・伊藤壽啓鳥取大農学部教授)は、1例目の養鶏場では野鳥の侵入を防ぐ網に数カ所の穴や隙間が見つかったと明らかにした。過去の事例における国の調査報告でも「鶏舎内の一部に隙間。鶏舎内でネズミの目撃情報があり、ふんも発見」(07年、清武町)、「カーテンはあるが、破れや隙間が多数。鶏舎内にスズメやモズの死骸を確認」(同、新富町)など防疫の不備が指摘されている。

 後藤教授は「防鳥ネットに不備がないか、消毒液は適正な濃度で使われているかなど再度確認してほしい。養鶏場に任せるだけでなく、県などの第三者が養鶏場に立ち入り、防疫対策を再確認することも必要」と強く訴える。