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「これ以上やりようが…」 最大限消毒なお拡大不安

2011年1月24日
 恐れていたことが現実に―。新富町三納代の養鶏場で23日、高病原性鳥インフルエンザが疑われる鶏が確認され、関係者はショックで言葉を失った。同町は県内市町村でトップの鶏卵産出額を誇る「養鶏の町」で、中でも感染疑いの鶏が見つかった農場周辺は、町内の採卵鶏の4分の1が集中する“心臓部”。1例目だけで封じ込めたいという関係者の思いはかなわず、さらなる感染拡大を懸念して農家の不安は極限に達した。

 感染疑いの鶏が見つかった農場は鶏舎が並ぶ養鶏団地の一角にあり、入り口に通じる道路は県警が通行を規制して物々しい雰囲気。小雨が降る中、町職員らが立ち入り禁止の看板を立て、埋却処分の候補地となる近くの空き地を測量したり重機を搬入したりする作業に追われた。

 町役場では、感染疑いの一報を受けて職員らが緊張した表情で庁舎に入った。夜になると、投光器の明かりの中、駐車場に防護服や手袋などの防疫資材が並べられ、消毒薬を載せたトラックが慌ただしく出入りしていた。

 町対策本部会議では埋却や防疫作業を24時間態勢で行う方針を決定。町中央公民館で緊急区長会も開かれ、町幹部が経過や対策を説明。土屋良文町長は「感染が疑われる鶏が確認されたことは大きな衝撃だ。出てしまった以上、何もかも早めの対策を取らなければならない」と力を込めた。

 同町の採卵農家は戸数18戸、産出額25億4千万円で、ともに県内市町村でトップ(2006年2月、県統計)。中でも感染疑いの農場周辺は町内の採卵鶏160万羽(10年11月、町統計)の4分の1が集中しており、同町の養鶏農家男性(66)は「4年前に発生した時は近くに鶏舎がなかったが、今回は感染拡大が心配だ。考えられる最大限の消毒を続けてきた。これ以上やりようがない」と頭を抱える。

 ブロイラーも含めて町内すべての農場が移動制限区域内に入り、経済的損失も大きい。同町新田の食鳥処理場も稼働休止が続き、管理職男性(59)は「従業員約350人の生活を考えると、移動制限の長期化だけは避けたい。児湯地域はブロイラー農家が密集しているので、地域一体となって防疫に取り組み、これ以上の感染を出さないようにしたい」と話していた。

【写真】高病原性鳥インフルエンザの感染疑いが確認された養鶏場周辺で立ち入り禁止の準備を進める新富町職員ら=23日午後4時15分、同町三納代

■発生ドキュメント

【21日】
午後5時15分  宮崎市佐土原町の養鶏場から宮崎家畜保健衛生所(家保)に鶏が36羽死んだと通報
 同9時半    県が対策本部を設置
【22日】
午前4時     高病原性ウイルス(H5亜型)を検出したと県が発表、農場から半径10キロ圏内を移動制限区域に設定
 同10時25分養鶏場で飼育する1万240羽の
殺処分を開始
午後2時55分  殺処分を終了
 同4時50分  エコクリーンプラザみやざきで処分鶏の焼却開始
【23日】
午前9時40分  新富町三納代の養鶏場から宮崎家保に鶏が20羽死んだと通報
午後0時20分  簡易検査で6羽中5羽陽性。今回2例目の感染疑い判明
 同1時     新富町が対策本部会議
 同2時     県対策本部が対策会議
 同3時     県が新富町役場内に現地対策本部を設置
 同7時半    新富町が緊急区長会
 同9時40分  2例目養鶏場から半径10キロ圏内を移動制限区域に設定
 同10時25分 2例目疑いについて、宮崎家保で遺伝子検査の結果、高病原性ウイルス(H5亜型)を検出したと県が発表