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【識者に聞く】異常早期通報を 末吉益雄宮崎大准教授

2011年1月23日
 宮崎市佐土原町上田島の養鶏農場で高病原性鳥インフルエンザの感染が疑われる鶏から22日、ウイルスが検出された。感染ルートや人体への影響などについて、家畜の疾病対策に詳しい宮崎大農学部の末吉益雄准教授(家畜衛生学)に聞いた。(聞き手 報道部・新坂英伸)

 ―感染ルートとして何が考えられるか。

 本県で越冬するカモが関係している可能性が高い。カモは鳥インフルエンザに感染しても、ウイルスを体内に残したまま生き続ける。海外で鳥インフルエンザに感染したカモが県内に飛来し、ハトやスズメ、ネズミなどの野生動物がウイルスの運び屋になって農場内に侵入、鶏が感染したのではないか。

 ―人へは感染しないのか。

 海外で人へ感染した事例があるが、こうした国は冷蔵技術が発達していないため、食用の鶏を生きたまま一般家庭などに運んでいる。感染した鶏と濃厚に接触すると人に感染する恐れがあるが、生きた鶏と消費者が接触する機会がほとんどない日本では、人が感染するリスクは考えにくい。

 ―感染拡大を防ぐための対策は。

 野生動物が媒介する鳥インフルエンザは、県内のあらゆる場所で発生する可能性がある。渡り鳥が越冬する川やため池に近い農場は、特に注意が必要。防鳥ネットを使用していても、野生動物が隙間から侵入することがあるので、農家はもう一度ネットを確認してほしい。

 感染した鳥のふんが靴底に付着したまま移動すると、人がウイルスを広げる恐れがある。餌付けなど水鳥との接触にも十分気をつけてほしい。動物園など人と鳥が触れ合う場所には、消毒槽の設置などの対策も必要だ。

 ―口蹄疫での経験をどのように生かすか。

 異常な鶏が見つかったらすぐに通報することはもちろんだが、万が一の発生に備えて、昼夜を問わず殺処分できる態勢を整えておくことも必要。早期に封じ込めることで、宮崎県の防疫態勢だけでなく、畜産に対する信頼も高まる。

【写真右上】末吉益雄宮崎大准教授

【写真左下】高病原性鳥インフルエンザのウイルスが検出された農場で鶏の殺処分に当たる関係者=22日午前(県提供)