【カツオ漁にかける】(上)思い
2011年5月13日
■水揚げは再生の象徴/「一日も早く」地元奮闘
本県の一本釣り漁船が操業拠点にしている宮城県気仙沼市で、カツオ漁が始まる6月の水揚げ再開へ向け関係者が奮闘している。地域経済の心臓部といえる魚市場には2カ月ぶりに電気が通じ、港内では被災船の撤去作業が続く。「水揚げを再生の象徴にしたい」。東日本大震災で甚大な被害を受けた漁港都市復興へ、心意気一つで気仙沼港一番乗りを目指す日南市の漁師たちもまた同じ思いを抱いている。(報道部・森耕一郎、奈須貴芳)
がれきの山が今も痛々しく残る道路脇では、津波になぎ倒された電信柱の新たな敷設作業が進んでいた。所々で地盤が陥没したり、浸水したりし、自衛隊員による行方不明者捜索が続く気仙沼港周辺。魚市場にやっと電線がつながったのは、ゴールデンウイーク中の2日だった。それでも、気仙沼漁協によると、浸水地域としてはいち早く、特例的な復旧だという。
人口7万4千人の約7割が水産業関連従事者といわれる漁港都市・気仙沼。港に水揚げされる水産物は血流となり、漁業者のほかにも水産加工、鉄工、物流、無線、航海計器、飲食など幅広い業界に恩恵をもたらしてきた。魚市場は、まさにその心臓部に当たる。
6月からのカツオ漁に伴う市場再開を地元経済界は固唾(かたず)をのんで見守る。気仙沼商工会議所の臼井賢志会頭は「何もかも失ったが、幸いにも漁場と船団は残っている。一日でも早く(カツオを)満船した船が入ってくることが第一だ。まずは、そこから経済復興を始めたい」と熱望する。
がれきが散乱していた魚市場1階の荷さばき場では今、関係者による懸命な復旧作業が続けられている。市内の至る所に散乱していた容量1トンのカツオ選別用コンテナ2千個すべてを回収。ベルトコンベヤーなどの機材も気仙沼漁協職員らが休日返上で修復に当たってきた。
ただ、全国的な資材不足のあおりを受けて水道関係の復旧が進んでいない。大潮の満潮時には、地盤沈下した荷さばき場のほとんどが冠水する状態だが、市水産課は「かさ上げ工事を進め、なんとか6月中の市場再開を実現させたい」とカツオ漁に懸ける。
気仙沼の熱意は、本県のカツオ漁師にも伝わっている。県漁連(丸山英満会長)によると、近海一本釣り船26隻が気仙沼港に集結し、水揚げを予定。このうち16隻が既にカツオの群れを追って北上し、気仙沼“一番乗り”のタイミングをうかがっている。丸山会長は「宮崎船団の心意気で、復興を後押ししたい」と意気込む。
気仙沼漁協魚市場担当部長の熊谷浩幸さん(48)は「多くの励ましの声に力づけられている。市場再開こそが皆さんの声にこたえること」と力を込めた。
【写真】津波の爪痕が今も痛々しく残る気仙沼市。復興作業が進まない中、魚市場関係者は再開へ向け苦闘を続けていた=宮城県気仙沼市(7日撮影)
本県の一本釣り漁船が操業拠点にしている宮城県気仙沼市で、カツオ漁が始まる6月の水揚げ再開へ向け関係者が奮闘している。地域経済の心臓部といえる魚市場には2カ月ぶりに電気が通じ、港内では被災船の撤去作業が続く。「水揚げを再生の象徴にしたい」。東日本大震災で甚大な被害を受けた漁港都市復興へ、心意気一つで気仙沼港一番乗りを目指す日南市の漁師たちもまた同じ思いを抱いている。(報道部・森耕一郎、奈須貴芳)
がれきの山が今も痛々しく残る道路脇では、津波になぎ倒された電信柱の新たな敷設作業が進んでいた。所々で地盤が陥没したり、浸水したりし、自衛隊員による行方不明者捜索が続く気仙沼港周辺。魚市場にやっと電線がつながったのは、ゴールデンウイーク中の2日だった。それでも、気仙沼漁協によると、浸水地域としてはいち早く、特例的な復旧だという。
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人口7万4千人の約7割が水産業関連従事者といわれる漁港都市・気仙沼。港に水揚げされる水産物は血流となり、漁業者のほかにも水産加工、鉄工、物流、無線、航海計器、飲食など幅広い業界に恩恵をもたらしてきた。魚市場は、まさにその心臓部に当たる。
6月からのカツオ漁に伴う市場再開を地元経済界は固唾(かたず)をのんで見守る。気仙沼商工会議所の臼井賢志会頭は「何もかも失ったが、幸いにも漁場と船団は残っている。一日でも早く(カツオを)満船した船が入ってくることが第一だ。まずは、そこから経済復興を始めたい」と熱望する。
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がれきが散乱していた魚市場1階の荷さばき場では今、関係者による懸命な復旧作業が続けられている。市内の至る所に散乱していた容量1トンのカツオ選別用コンテナ2千個すべてを回収。ベルトコンベヤーなどの機材も気仙沼漁協職員らが休日返上で修復に当たってきた。
ただ、全国的な資材不足のあおりを受けて水道関係の復旧が進んでいない。大潮の満潮時には、地盤沈下した荷さばき場のほとんどが冠水する状態だが、市水産課は「かさ上げ工事を進め、なんとか6月中の市場再開を実現させたい」とカツオ漁に懸ける。
気仙沼の熱意は、本県のカツオ漁師にも伝わっている。県漁連(丸山英満会長)によると、近海一本釣り船26隻が気仙沼港に集結し、水揚げを予定。このうち16隻が既にカツオの群れを追って北上し、気仙沼“一番乗り”のタイミングをうかがっている。丸山会長は「宮崎船団の心意気で、復興を後押ししたい」と意気込む。
気仙沼漁協魚市場担当部長の熊谷浩幸さん(48)は「多くの励ましの声に力づけられている。市場再開こそが皆さんの声にこたえること」と力を込めた。
【写真】津波の爪痕が今も痛々しく残る気仙沼市。復興作業が進まない中、魚市場関係者は再開へ向け苦闘を続けていた=宮城県気仙沼市(7日撮影)
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