カツオ漁期を終えて(1)復興への一歩
2011年12月16日
■継続的支援訴え
東日本大震災からの復興のシンボルとして、生鮮カツオの水揚げに懸けた宮城県気仙沼市。関係者が力を結集し、本県をはじめ全国の漁師もカツオを揚げ続けて「15年連続日本一」をほぼ確実にした。そのカツオ漁のシーズンが11月末で終わり、気仙沼はどのような状態にあるのか。復興の第一歩をカツオに託した気仙沼の今を伝える。
■総力戦、港に活気
師走に入った気仙沼港。水揚げのある早朝は特に冷え込む。ずらりと並んだサメやマグロの間を縫うようにコンテナを積んだフォークリフトが走り回り、仲買人たちは白い息を吐きながら品定めしている。「気仙沼らしい光景だね」。カツオの水揚げ以来、活気が戻り始めた港を見て、震災で船を失った地元漁師の岩石養助さん(69)もうれしそうだ。
カツオの水揚げ再開に向けては総力戦だった。港整備のほかに、餌のカタクチイワシは地元定置網漁師が急ピッチで準備。津波でタンクが流され気仙沼湾を火の海にした燃油は、タンカーからバージ船(小型タンカー)で港に回すという方法で調達できた。街も、仮設風呂を用意して銭湯を再開させたり、プレハブの仮設店舗を構えたりして漁師を温かく迎え入れた。
港周辺では今もがれきの撤去作業が延々と続く。地盤が沈下した平地には海水がたまったままだ。水産加工施設や製氷冷凍施設など、関連施設が並んでいた場所も同様。津波で1階部分を失ったままの建物、むき出しの土台が寒風にさらされている。
仮設住宅で暮らす熊谷登さん(41)が勤めていた水産食品加工会社も工場が全て破壊された。「解雇は仕方がない」と割り切っているが、妻と小学3年生の長女を養わなければならない。収入源の雇用保険も来年3月には切れる。焦りが募るうちに水産業へのこだわりは薄れ、「働けるならどこでもいい」と考えるようになったという。
港が活気づく一方で、市内は熊谷さんたちのような失業者であふれ、離職者は雇用保険加入者の4割以上になるという。
市は10月、震災復興計画「海と生きる」を策定した。今後約5年間を「集中復興期間」と定め、津波対策や早期の産業復活と雇用の確保などを目標に掲げる。重点事業の一つは魚市場、加工場など水産基盤施設の早急復旧。基幹産業である水産業を再建し、地域経済と雇用を下支えしようというものだ。
ただ、この計画も、カツオをはじめさまざまな魚が水揚げされてこそ実現できる。市水産課の熊谷力市課長は「震災後の気仙沼に最初の呼吸をさせてくれた」とカツオ水揚げ再開の意義を語るが、その一方で「宮崎をはじめ全国のカツオ船には来年以降も水揚げに来てほしい」と切望。来年も、その先も、継続的な支援を訴える。
【写真】カツオ漁のシーズンを終えた気仙沼市魚市場。今はサメなどが水揚げされ、水産関係者が慌ただしく作業に追われている=宮城県気仙沼市
東日本大震災からの復興のシンボルとして、生鮮カツオの水揚げに懸けた宮城県気仙沼市。関係者が力を結集し、本県をはじめ全国の漁師もカツオを揚げ続けて「15年連続日本一」をほぼ確実にした。そのカツオ漁のシーズンが11月末で終わり、気仙沼はどのような状態にあるのか。復興の第一歩をカツオに託した気仙沼の今を伝える。
■総力戦、港に活気
師走に入った気仙沼港。水揚げのある早朝は特に冷え込む。ずらりと並んだサメやマグロの間を縫うようにコンテナを積んだフォークリフトが走り回り、仲買人たちは白い息を吐きながら品定めしている。「気仙沼らしい光景だね」。カツオの水揚げ以来、活気が戻り始めた港を見て、震災で船を失った地元漁師の岩石養助さん(69)もうれしそうだ。
カツオの水揚げ再開に向けては総力戦だった。港整備のほかに、餌のカタクチイワシは地元定置網漁師が急ピッチで準備。津波でタンクが流され気仙沼湾を火の海にした燃油は、タンカーからバージ船(小型タンカー)で港に回すという方法で調達できた。街も、仮設風呂を用意して銭湯を再開させたり、プレハブの仮設店舗を構えたりして漁師を温かく迎え入れた。
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港周辺では今もがれきの撤去作業が延々と続く。地盤が沈下した平地には海水がたまったままだ。水産加工施設や製氷冷凍施設など、関連施設が並んでいた場所も同様。津波で1階部分を失ったままの建物、むき出しの土台が寒風にさらされている。
仮設住宅で暮らす熊谷登さん(41)が勤めていた水産食品加工会社も工場が全て破壊された。「解雇は仕方がない」と割り切っているが、妻と小学3年生の長女を養わなければならない。収入源の雇用保険も来年3月には切れる。焦りが募るうちに水産業へのこだわりは薄れ、「働けるならどこでもいい」と考えるようになったという。
港が活気づく一方で、市内は熊谷さんたちのような失業者であふれ、離職者は雇用保険加入者の4割以上になるという。
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市は10月、震災復興計画「海と生きる」を策定した。今後約5年間を「集中復興期間」と定め、津波対策や早期の産業復活と雇用の確保などを目標に掲げる。重点事業の一つは魚市場、加工場など水産基盤施設の早急復旧。基幹産業である水産業を再建し、地域経済と雇用を下支えしようというものだ。
ただ、この計画も、カツオをはじめさまざまな魚が水揚げされてこそ実現できる。市水産課の熊谷力市課長は「震災後の気仙沼に最初の呼吸をさせてくれた」とカツオ水揚げ再開の意義を語るが、その一方で「宮崎をはじめ全国のカツオ船には来年以降も水揚げに来てほしい」と切望。来年も、その先も、継続的な支援を訴える。
【写真】カツオ漁のシーズンを終えた気仙沼市魚市場。今はサメなどが水揚げされ、水産関係者が慌ただしく作業に追われている=宮城県気仙沼市
(1)復興への一歩 | 2011年12月16日付 |
(2)水揚げ | 2011年12月17日付 |
(3)餌不足 | 2011年12月18日付 |
(4)水産会社 | 2011年12月19日付 |
(5)漁港機能 | 2011年12月21日付 |
(6)価 格 | 2011年12月22日付 |
(7)市街地 | 2011年12月24日付 |