日南は今【上】支援…水産物取り寄せ販売
2012年2月5日
■「復興助けに」市民結束
波打つ道路、土台だけが残った住居跡、1階が津波でえぐり取られたビル…。日南市出身で会社員の室之園一三さん(63)=宮崎市大島町=が昨年7月に訪れた宮城県気仙沼市は、東日本大震災の爪痕が生々しく残っていた。勤務する出版社の企画で、支援物資を被災地に届けたときのこと。古里と縁の深い気仙沼の惨状に胸が痛んだ。
その日、室之園さんはカツオの水揚げが始まったばかりの魚市場で、水産物直売所「お魚いちば」に勤める志田一司さん(61)と出会う。「店は津波でやられたけど、泥をかき出した。もうすぐ再開するんだ」。絶望的な状況にあっても、志田さんの目は輝いていた。心を打たれた室之園さんは「絶対応援する」と約束。2人の出会いは、後に日南市内で広がる「気仙沼応援フェア」につながっていく。
室之園さんは帰県後、日南市内で海産物店を営む友人の河野重春さん(70)=同市吾田東9丁目=に相談した。震災の様子を新聞やテレビで見るたびに心を痛めていたという河野さんは協力を快諾。ほかの友人にも声を掛けると「自分たちも被災地のために何かしたかったんだ」と5人が仲間に加わった。
メンバーが考えたのは「水産物を売って、気仙沼復興に役立ちたい」。こうして昨年10月、市内各店に協力を呼び掛け、「お魚いちば」から仕入れたふかひれスープやサバみそ煮、ワカメなど6品の常設販売を始めた。協力店は現在、小売店や飲食店など5店舗を数える。
「1個でも多く売ろう」と気仙沼と同じ価格で販売しているため、輸送費などを差し引くと利益はほとんど出ないという。そんなメンバーたちの思いが通じたのか、来店した市民からは「新聞やテレビで見ると大変そうだ。力になりたい」との声が聞かれるようになり、これまでに計5千個を販売することができた。
仕入れから在庫管理までを引き受けている河野さんは「気仙沼の担当者と商品のやりとりで電話をするが、最近は声が明るくなったように感じる。最初は不安だったが『やっていることは無駄じゃない』と思うようになった」。自分たちの活動に、手応えを感じ始めている。
カツオ漁を通じ、気仙沼市と親交の深い日南市。震災以降、水揚げで気仙沼の復興を後押ししてきた漁師たちとともに、市民の間にも「助けになりたい」との思いが広がっている。気仙沼を思う日南の今を追う。
【写真】気仙沼産の水産加工品について説明する河野さん(左)
波打つ道路、土台だけが残った住居跡、1階が津波でえぐり取られたビル…。日南市出身で会社員の室之園一三さん(63)=宮崎市大島町=が昨年7月に訪れた宮城県気仙沼市は、東日本大震災の爪痕が生々しく残っていた。勤務する出版社の企画で、支援物資を被災地に届けたときのこと。古里と縁の深い気仙沼の惨状に胸が痛んだ。
その日、室之園さんはカツオの水揚げが始まったばかりの魚市場で、水産物直売所「お魚いちば」に勤める志田一司さん(61)と出会う。「店は津波でやられたけど、泥をかき出した。もうすぐ再開するんだ」。絶望的な状況にあっても、志田さんの目は輝いていた。心を打たれた室之園さんは「絶対応援する」と約束。2人の出会いは、後に日南市内で広がる「気仙沼応援フェア」につながっていく。
□ □
室之園さんは帰県後、日南市内で海産物店を営む友人の河野重春さん(70)=同市吾田東9丁目=に相談した。震災の様子を新聞やテレビで見るたびに心を痛めていたという河野さんは協力を快諾。ほかの友人にも声を掛けると「自分たちも被災地のために何かしたかったんだ」と5人が仲間に加わった。
メンバーが考えたのは「水産物を売って、気仙沼復興に役立ちたい」。こうして昨年10月、市内各店に協力を呼び掛け、「お魚いちば」から仕入れたふかひれスープやサバみそ煮、ワカメなど6品の常設販売を始めた。協力店は現在、小売店や飲食店など5店舗を数える。
□ □
「1個でも多く売ろう」と気仙沼と同じ価格で販売しているため、輸送費などを差し引くと利益はほとんど出ないという。そんなメンバーたちの思いが通じたのか、来店した市民からは「新聞やテレビで見ると大変そうだ。力になりたい」との声が聞かれるようになり、これまでに計5千個を販売することができた。
仕入れから在庫管理までを引き受けている河野さんは「気仙沼の担当者と商品のやりとりで電話をするが、最近は声が明るくなったように感じる。最初は不安だったが『やっていることは無駄じゃない』と思うようになった」。自分たちの活動に、手応えを感じ始めている。
※ ※
カツオ漁を通じ、気仙沼市と親交の深い日南市。震災以降、水揚げで気仙沼の復興を後押ししてきた漁師たちとともに、市民の間にも「助けになりたい」との思いが広がっている。気仙沼を思う日南の今を追う。
【写真】気仙沼産の水産加工品について説明する河野さん(左)
【上】支援…水産物取り寄せ販売 | 2012年2月5日付 |
【中】帰郷…喜びと離れるつらさ | 2012年2月6日付 |
【下】出港…「今年も復興の力に」 | 2012年2月7日付 |