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あの瞬間、歴史が生まれた

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みやざきゴーヤー物語

2017年6月26日

強い〝個性〟着目 健康野菜へ


全国標準よりもビタミンCの含有量が1.4倍の「みやざきビタミンゴーヤー」

全国標準よりもビタミンCの含有量が1.4倍の「みやざきビタミンゴーヤー」

 苦みとゴツゴツとした外見。宮崎県で古くから栽培されてきたゴーヤーは、野菜の中でもひときわ強い〝個性〟を持つ。県内の生産者や研究者は、ゴーヤーの栄養や効能に目を付け、県を挙げて品種改良や栄養価の分析を進めてきた。長い期間をかけてブランド認証の取得など品質向上にも力を入れ、健康野菜としての地位を確立。積年の努力と研究で全国2位の出荷量を誇る生産地となっている。

品種改良で苦み軽減

 ゴーヤーの原産地は熱帯アジアで、標準和名は「ツルレイシ」。本県では古くから家庭の庭先で栽培され、「ニガウリ」や「ゴリ」などと呼ばれ、夏の野菜として知られていた。

強い日差しを受けて大きく育ったゴーヤーを収穫する野崎会長

強い日差しを受けて大きく育ったゴーヤーを収穫する野崎会長

 JA宮崎中央ゴーヤー部会の野崎築(きずき)会長(58)は「今のゴーヤーと比べれば、当時のゴリの苦みは桁違い。よう食えんかった」と豪快に笑う。「今はサラダ感覚で、女性も子供も食べられる。この野菜の将来性を信じて、作り続けた先人たちはすごいね」と実感を込めた。

 県内で作物として露地栽培が始まったのは1960(昭和35)年ごろで、67年には旧佐土原町でハウス栽培がスタート。当時から「夏バテ防止に効く」と言われていたが、独特の味は市場向けとは言い難かった。「苦みを抑えれば、もっと多くの人に食べてもらえるのではないか」―。農家はJAとともに品種改良を要望。80年に県総合農業試験場に県内外の22品目が集められ、新品種の研究が始まった。82年にはニガウリ品種「宮崎緑」が生まれた。

沖縄ブームで人気沸騰

 追い風は南から吹いてきた。2001年に放映された、沖縄県を舞台にしたNHK連続テレビ小説「ちゅらさん」をきっかけに、ゴーヤーの知名度は一気に全国区へ。需要の高まりとともに、沖縄と同じく温暖な気候を持つ本県でも生産が本格化、同試験場が品種改良した収量の多い「佐土原3号」の誕生も栽培面積の拡大を後押しした。本県の出荷量は02年に2600㌧、05年には5500㌧を記録。沖縄に次ぐ全国2位となり、一大産地として名を上げるまでとなった。

豊富なビタミンCでブランド認証


高い栄養素が評価され、みやざき商品ブランド認証を受けた「みやざきビタミンゴーヤー」のブランド認定証交付式(宮崎日日新聞社提供)

高い栄養素が評価され、みやざき商品ブランド認証を受けた「みやざきビタミンゴーヤー」のブランド認定証交付式(宮崎日日新聞社提供)

 「ブームを一過性で終わらせたくない」。ゴーヤーを生産する県内の全10JAは産地間差別化、競争力強化を目指し、全国に先駆けて08年から本県産の科学的な分析に着手。5年間にわたる調査の結果、本県産は全国平均よりもビタミンCの含有量が1・4倍高いことが分かり、ピーマンに次ぐ2例目の「健康認証」を取得、「みやざきビタミンゴーヤー」としてブランドの仲間入り。近年の健康志向とともに、全国の注目度も高まりをみせている。
現在、県内では370戸の農家が栽培に励んでおり、強い日差しがゴーヤーの栄養価をさらに高めている。野崎会長は「苦みという個性を売りにした野菜はほかになく、手をかけただけ良いものができる。これからも品質や収量を維持し、次の世代につなげていきたい」と気を引き締めた。