みやざききゅうり物語(下)
2018年2月5日
最新技術で日本一の座を不動に
産地形成を目指した県産きゅうり。1970年代後半、輸入野菜の増加やハウス栽培に欠かせない燃油価格の上昇が農家経営を圧迫する危機に直面した。規模拡大や品質向上へ産地が努力を続ける一方、日本経済はバブルが崩壊し、農産物の価格も低迷。「作れば売れる時代」は終焉を迎えた。
経営安定へ 付加価値追求
奥村善朗さん
「単価の取れるきゅうりを作ろう」。93年、JAはまゆう(当時JA串間市)の指導員奥村善朗さん(68)は、付加価値と品質で勝負しようと、ハウスで収穫しながら同時に箱に詰めて出荷していく方式を提案した。「実に1度しか触れないのでイボ立ちが良い。高値で売れる」。ハウスを巡回して一人一人を説得していった。しかし、当初はレギュラー品と同じ扱いを受け、「何でそんな難しくせんといかんとな」「高く売れとらん」などの声も寄せられた。JAは規格外のきゅうりも引き受け、農家を後押し。次第に理解を得られ、経営も安定していった。
トゲは鮮度の証というこだわりのワンタッチきゅうり。串間で生まれ、みやざきブランド第一号に認証された
新技術で収量アップ
ワンタッチきゅうりが主流となり始めた09年、新しいウイルス病・黄化葉巻病が全国の産地で流行し、深刻化した。「組織を超えた防除でウイルスを抑え込んだ」と県農業経営支援課の黒木正晶さん。一致団結し危機を回避、ついに生産量日本一を獲得した。
県内最大のきゅうり産地JA宮崎中央では、12~2月の厳寒期に収量を向上させるため、ハウス内の環境を複合的に制御する取り組みが進められている。温湿度はもちろん、日射量、光合成に必要な二酸化炭素(Co2)の濃度を管理する環境制御システムとCo2発生機を導入。ハウス内の環境は24時間パソコンで管理、携帯電話でも確認できる。田野地区では98%普及し、平均反収は群を抜き、30㌧の生産者もいるという。JA宮崎中央園芸指導課は「生産技術や収量向上にフィードバックしていくための〝データを読み取る力〟が求められている」と話す。
合格一直線―。まっすぐな県産きゅうりで作ったかっぱ巻きをみやざきブランド推進本部が贈呈し受験生を応援、日本一をPR