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ラナンキュラスPon-Ponシリーズ編

2019年2月25日

華やかに祝い事を彩る 大輪の花



強いフリルが特徴のPon‐Ponシリーズ

強いフリルが特徴のPon‐Ponシリーズ

 まん丸の愛らしい形とくっきりと波打つ花びら―。チアリーダーの応援などで使われるボール状の飾り「ポンポン」を連想させるラナンキュラスPon‐Ponシリーズは、イタリア生まれの花。5年前に初めて本県に導入され、山間部を中心に広がりを見せている。JAと生産者は本県の新たな特産品にしようと挑戦を続ける。

日本一の産地 新品種でさらに拡充

 本県でのラナンキュラス栽培は2000年ごろに始まり、元々、菊の栽培が盛んだった冷涼な山間部で拡大してきた。小規模農家の間で技術を共有しながら少しずつ生産量を伸ばし、07年には栽培面積207㌃と日本一を達成。生産量もトップクラスを維持している。

 Pon‐Ponシリーズはイタリア北西部、地中海リグーリア沿岸で開発された新品種。従来種に比べ、花びらの強いフリルが特長で、花は「白と緑」「ピンクと緑」など〝表情〟を豊かに変えながら、大人の拳ほどの大きさに広がっていく。JA宮崎経済連営農振興課の長谷川哲司さんは「新品種は、日本一のラナンキュラスをさらに盛り上げるきっかけになる。市場に周知を図り、需要の裾野を広げていきたい」と意気込む。

独自のグラデーション 繊細な技術で表現

 Pon‐Ponシリーズの本県への導入は14年。ブランド花卉の種苗販売や生産を手掛ける澁谷農園(本社・長野県)の澁谷喜八代表が橋渡し役となり、宮崎市で試験栽培が始まった。

 ラナンキュラスの一大産地として栽培技術を確立していた本県だが、新品種の栽培には多くのハードルが立ちはだかった。

 イタリアから輸入する球根は、植物防疫のため隔離された圃場で栽培し、ウイルス感染の有無を調べる必要がある。結果が出るまで球根の供給ができないため、大きなリスクを背負いながらの挑戦が待っていた。

 さらに、Pon‐Ponシリーズの魅力である花びらにグリーンが混ざる独特の発色と強いフリルを出すには、繊細な栽培技術が求められた。 ◎

祝い事を華やかに演出 本県の新たな魅力に

JA職員と打ち合わせをするひなたフラワーファームの根井貴洋さん(右)

JA職員と打ち合わせをするひなたフラワーファームの根井貴洋さん(右)

 生産者やJA、県総合農業試験場は一丸となってPon‐Ponシリーズの試験栽培を成功させ、導入から2年後の16年に初出荷。導入時から栽培を続ける、ひなたフラワーファーム(宮崎市)代表の根井貴洋さん(33)は「新品種の栽培は困難の連続だが、ほかにないものを作るのが楽しい」と笑顔で話す。

 現在、同シリーズは県内14戸約65㌃で生産され、年末から関西を中心に出荷されている。独特の華やかさに加え、花もちが良いため、結婚式や卒業式、入学式などお祝い事にピッタリ。全国で注目を集め、認知度も高まってきた。

永迫文幸さん

永迫文幸さん

 JAこばやし管内の7戸で「ラナンキュラス研究会」を結成し、栽培に取り組む永迫文幸さん(64)は「ラナンキュラスは病気にも強く、新品種はこれからがさらに楽しみ。宮崎の新しい魅力になり、若い生産者が増えてくれればいい」と期待を寄せている。