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あの瞬間、歴史が生まれた

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みやざき冷凍ほうれんそう物語

2019年5月20日

安全+機能性 産地拡大へ一丸



FCが定期的にほ場を回り、生産工程を管理する。左からFCの生目さん、契約農家の外山さん、JA西都黒木俊作さん

FCが定期的にほ場を回り、生産工程を管理する。左からFCの生目さん、契約農家の外山さん、JA西都黒木俊作さん

 忙しい日々の食卓を支える冷凍野菜。なかでも県産冷凍ホウレンソウは現在、年間1万3100㌧と国産の66%を占める。調理の利便性や栄養価の高さが注目され、ニーズを増す中、生産者やJA、事業者が一体となって安全・安心な産地づくりに力を注いでいる。

安全でおいしい 本物にこだわる

 本県での冷凍野菜加工の始まりは1975(昭和50)年。かんしょ・サトイモ主体にスタートし、ニーズの多様化に合わせてホウレンソウ・ゴボウなど原料の契約栽培は増大した。2001年、輸入野菜の残留農薬問題が発生。また、食品偽装も相次いだ。

 安全な県産野菜の引き合いはますます強くなる―。04年、JAグループ宮崎の冷凍野菜の産地形成と販路開拓の取り組みが始まった。葉タバコの廃作に伴う作付転換、口蹄疫の復興対策とも重なり、ホウレンソウを沿岸部で産地化することに。11年、九州最大級の野菜冷凍施設を持つ「ジェイエイフーズみやざき」が西都市に誕生した。

 経験も原料も売り先もない中、安全でおいしいものを作ることを貫いた。製造現場ではISO認証を取得し、衛生管理を徹底した。フィールドコーディネーター(FC)が260の契約ほ場すべてを定期的に巡回し、生産工程を管理することで質の高さを確保。昨年5月には、県内で初めて、国際認証規格「グローバルGAP」のグループ認証を取得した。

質の高い原料確保へ JA、生産者と協力

 安価な中国産に押され、大量の在庫を抱えても地道に営業を続けた。工場設立に奔走した内野宮由康さん(現JA宮崎経済連園芸部部長)は「本当においしい国産を食べたいと世間の風向きが変わるのを肌で感じた」と振り返る。

収穫されたホウレンソウは、その日のうちに工場へ運ばれ急速冷凍される

収穫されたホウレンソウは、その日のうちに工場へ運ばれ急速冷凍される

 生産者、JAも支えた。現在、同社の原料はJA宮崎中央、尾鈴、西都の契約農家62戸が栽培するが、収穫実績ゼロからのスタート。「最初の3年は失敗続きだったが、栽培技術も確立した。播種・収穫の計画が明確でまとまった面積をこなせる」と契約農家の外山正一さん(65)=西都市上三財。安全・安心のため、グローバルGAPの細かな基準クリアにも協力する。

 「皆さん熱心で日本一の産地と自負している」とFCの生目正男さん(66)。JA西都営農指導課は「FCのアドバイスが適切で、生産も安定してきた。農家の作業は土づくりと施肥がメインなので体力がなくてもできる」と後継者や人手不足解消に期待する。

豊富なルテイン 増産へ一致団結

 加工用ホウレンソウは青果物の倍以上の40~60㌢まで成長させて収穫するため、栄養価が高く、甘みや風味も増す。昨年、光の刺激から目を守るルテインの機能性表示食品として、新たな価値も付加された。

旬を閉じ込めた機能性表示食品「宮崎育ちのほうれんそう」

旬を閉じ込めた機能性表示食品「宮崎育ちのほうれんそう」

 県内冷凍加工事業者6社でつくる宮崎県冷凍野菜加工事業者連携推進協議会では、原料野菜や人員の確保に向け、ほ場の集約・機械化や共同配送を進める。内野宮部長は「まだまだ量が足りない。協力し合って、農家や地域、消費者のニーズに応えたい」。トップ産地となった本県は一致団結してさらなる安定供給を目指していく。