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【ふるさとへ】 日本一宮崎牛のCMを制作した 田中 淳一さん

2018年2月26日

口蹄疫機に軸足地方へ


 全国和牛能力共進会(全共)で3大会連続日本一を果たした宮崎牛。この偉業を表現したのが、宮崎牛を積み上げて富士山をかたどった「宮崎牛赤富士」のCMやポスターだ。制作した延岡市出身のクリエーティブディレクター田中淳一さん(47)に、作品にまつわる古里への思いを聞いた。

 田中さんは早稲田大を卒業後、旭通信社(現ADK)に入社。企業や商品の広告を担当していたが、2014年に退社。独立後は、食の魅力を伝える延岡市のプロモーションビデオ「筏(いかだ)の上のレストラン」制作や今治タオルの商品企画など、地方に軸足を置いた仕事を続けている。

地方に軸足を置いた仕事を続けているクリエーティブディレクターの田中淳一さん

地方に軸足を置いた仕事を続けているクリエーティブディレクターの田中淳一さん

 田中 転機は宮崎で起きた口蹄疫。同級生が防護服のようなものを着て車を消毒する様子を見て、「(この非常時で)僕らの仕事は本当に必要なのか」と思えた。その後、東日本大震災で被災した三陸鉄道で、子供たちを元気づける企画に参加。人気アニメのキャラクターが手をつなぐラッピング電車を走らせたら、大喜びしてくれた。この経験で「地方には、僕らを必要としてくれる場所があるんじゃないか」と考えることができた。

 「宮崎牛赤富士」は1分ほどの映像もあり、動画投稿サイト「YouTube」での視聴回数は100万回を超えている。

 田中 口蹄疫が今の自分を作るきっかけだったのでプレッシャーを感じていた。富士山を選んだのは、同じ日本一だし、外国人がよく知っている山なら、宮崎牛がもっと海外に出ていけるきっかけになると思ったからだ。用意した宮崎牛は30キロ。山の下部分が赤身、頂上付近は霜降りを使って雪が積もっている様子を表現した。

 本県の主産業は農林水産業。16年の農業産出額は3562億円で、都道府県ランキングは全国5位。肉用牛やブロイラーが主力で全体の61・9%を占める。キュウリ、米、ピーマンといった品目も盛んで、それぞれの産出額は100億円を上回る。

「宮崎牛赤富士」のポスター(JA宮崎経済連提供)

「宮崎牛赤富士」のポスター(JA宮崎経済連提供)

 田中 宮崎には宮崎牛だけでなく素晴らしい農畜産物がいっぱいある。でも、まだ発信が下手で、「もったいないな」と感じる。宮崎は九州の中でも交通の便が悪いと言われるが、地図を見ると、アジアの国々との距離は近い。環太平洋連携協定(TPP)も控えており、それらの国の人たちと仲良くなってマンゴーや野菜などを売り込み、観光にも来てもらえるようにプロモーションしたらどうだろう。私も、そうした仕事のお手伝いをしたい。
(東京都渋谷区の事務所で)