【ふるさとへ】 県と就職支援協定を結んだ専修大の理事長/日高義博(ひだかよしひろ)さん(69)=宮崎市佐土原町出身=
2017年12月25日
優秀な人材 地元に帰す
学生には「拠点は東京だけではない。帰るチャンスがあれば帰りなさい」と話している日高理事長
日高理事長は日向学院高を卒業後、専修大に進み、明治学院大大学院を経て専修大で専任講師として働き始めた。2004年から13年まで同大学の学長を務め、06年には理事長にも就任した。
日高 大学2年のときに刑法の学者になろうと決断したときから(刑法学者の仕事がなかった)古里は捨て、親も捨てることになった。でも、いまだに恋しい。帰りたいという思いが年々強くなる。私みたいな思いを持っている人は多いのではないか。
本県の若者の7割が県外に流出しているといわれる中、県が若者の県内就職促進のために大学と協定を結ぶのは、専修大が初のケースとなった。
日高 以前、「地元に帰りたい」という学生は40%いたが、実際にUターンできるのは30%、残り10%は東京などで働かざるをえない状況があった。協定は、こうした事情から生まれた。これまでに宮崎県をはじめ20の自治体と締結(12月19日現在)しており、今後も続ける方針だ。
そもそも、「地元に優秀な人材を帰す」というのは私たちの大学の伝統。さまざまな地方から入学してきた学生たちは、大学でぶつかり合い、もまれることで、古里を外から見る視点を持つ。そんな学生を地方に戻して、地方を支えてもらいたい。彼らには「拠点は東京だけではない。帰るチャンスがあれば帰りなさい」と言っている。
地方創生関連法の成立から3年が経過したが、地方では人口減少に歯止めがかからない。本県は16年4月、39年ぶりに人口が110万人を割り込んだ。今年11月の推計人口は108万7961人。
日高 日本には、それぞれの地方に文化的な核がきちっと存在し、共生していることが強み。明治維新で、それまでの日本になかったヨーロッパの制度を取り入れても受け止めることができたのは、そのおかげだ。ほかの国ではそうはいかない。だから、中央だけでなく地方も育てなければならない。
人の考え方の根底には育った土地の価値観が生きている。例えば台風の多い宮崎では、自然と人間が共生する感覚が身に付いている。食べ物や自然が豊かだから、おおらかでぼくとつな人が多いのも特徴。私自身、帰省するたびにほっとするので、宮崎のDNAが仕組まれた気がする。この“日向人の骨”は、いつまでも守り続けてほしい。
(東京都千代田区の専修大で)