災害犠牲ゼロキャンペーン「ソナウレ!〜備えあれば憂いなし」
「ソナウレ!」は、宮崎日日新聞社が本年度から取り組む長期企画。避難訓練や座談会を地域とともに実践し、地震、津波や風水害などさまざまな災害に対する防災力の強化を目指します。県内各地で年3回開催予定です。
二ツ立地区(宮崎市佐土原町) 「全域に津波」備え再検証
2015年6月11日付紙面掲載
「災害犠牲ゼロキャンペーン『ソナウレ!〜備えあれば憂いなし』」第1弾は5月24日、宮崎市佐土原町下田島・二ツ立(ふたつだて)地区であり、住民による津波避難訓練や識者を交えた座談会が行われた。
同地区は市の北端、一ツ瀬川の右岸に位置し、東に日向灘を望む。海岸からは1キロほどしか離れておらず、標高は約2・2メートル。南海トラフ巨大地震が発生した場合、25分以内に津波が到達、地区全域が1・3〜1・9メートル浸水すると予測される。3月25日には、自治体による県内初の津波避難タワーが完成。地区住民約170人よりも30人多い、約200人が収容可能となっている。
【訓練】津波到達25分逃げ切れるか
新設タワー向け全力
南海トラフ巨大地震による大津波を想定した避難訓練には住民110人が臨んだ。到達時間は25分、迫り来る津波より早く逃げられるか-。
午後1時半、大きなサイレン音とともに大津波警報の発令を知らせる防災無線が地区に響き渡った。「避難を始めてください」。最も遠い家からは約600メートル。徒歩や自転車、電動カート、歩けない高齢者は近所の住民がリヤカーや車いすに乗せて集落の入り組んだ細い路地を急いだ。
最終的には、予想される最短津波到達時間より早い、20分以内に全員が避難を終えた。
住民たちは「訓練によって課題が出てきた。今後も繰り返さないといけない」と訓練の重要性をかみしめていた。
【座談会】「死亡率100%」覆すためには
避難ルール作り必要
二ツ立地区営農研修施設で開いた座談会では、自治会や自主防災組織、住民の代表ら12人が訓練を振り返り、真剣に議論した。
訓練では家族を捜して避難に時間を要した人もおり、宮崎大の原田隆典教授は「人を捜さず、自分だけでも逃げることが基本。その認識を共有してほしい」と呼び掛けた。
災害時要援護者を速やかに避難させる態勢をどうやって整えるか、担架などの防災資機材の準備は万全か-。議論は尽きず、いざタワーに人が集まったとき、いかに素早く上まで避難できるかも大きな懸案となった。地区老人会副会長の山口捨博さん(81)は「担架は右側、1人の人は左側などと決めた方がいいのでは」とルール作りの必要性に言及していた。