対話重ねて関係構築を
企業生存のためのトリセツ
~脳科学から考えるジェンダー平等
感性リサーチ社長 黒川伊保子さん
「みやざき女性の活躍推進会議」の総会・研修会は18日、宮崎市の宮日会館でありました。感性リサーチ(東京)社長の黒川伊保子さんが「企業生存のためのトリセツ~脳科学から考えるジェンダー平等」と題して基調講演。オンライン参加を含む約180人が聞き入りました。対話を通したコミュニケーションの重要性などについて呼びかけた講演内容を紹介します。
男女の脳は違わないけど違う
人工知能(AI)の時代が本格化し、今までとは全く違う考え方で企業内コミュニケーションを進めていく必要があります。私自身はAーの研究者で、40年余り人の脳を分析してきました。脳を「電気回路装置」として見ると、男女でとっさに違う脳神経回路を選ぶ傾向が分かってきました。それでは男女の脳に違いはあるのか。結論は「男女の脳は違わないけど違う」です。
構造は同じ、機能差もありません。しかし、コミュニケーションの傾向を分類すると「縦型」と「横型」の2種類があり、男性の9割が結論にこだわり、スピード感を重視する「縦型」で、女性の9割がプロセスにこだわり、共感を重視する「横型」なのです。
そのため、なぜ相手は「分かってくれないのか」「分かろうとしないのか」という誤解が男女の間で発生します。でもそれは心のすれ違いではなく、脳のとっさの使い方の違いにあるのです。
例えば何か問題が生じた時、縦型は今できることに意識を集中し、解決へ即応しようとします。一方、横型は過去の記憶から類似の事例などを呼び覚まし、何が原因だったか探ろうとします。互いに補完し合う関係である点は良いのですが、コミュニケーションの相性は良くありません。
話は共感で聞き自分は結論から話す
では、どうすれば良いのか。対話の奥義は「人の話は共感で聞き、自分の話は結論から話す」ことです。
共感で人の話を受けとめるコツは、ポジティブな話なら「いいね」「分かるよ」と肯定的に捉えること。ネガティブな話は「そうか」「大変だったね」など気持ちは受けとめつつも、事実や事柄には白黒をつけないことがポイントです。例えば人を非難する言葉に安易に同意すると、自分もその人を非難しているととられかねません。
結論から話すコツは、簡潔に一文で。無理な仕事を断るときも、出来ることから伝えるとよいでしょう。
AIとの協働時代に入り、私は雑談(対話)がますます重要になっていると思います。ふと頭に浮かんだことを言葉にするという仕組みは1脳の記憶領域を探り2五感情報等をきっかけにイメージをつかみ3言葉に変換し4声に出す―という流れです。1と2は右脳、3は左脳、4は小脳を使います。つまり、対話するということは、脳全体を活性化し、発想力を高め、勘も含めた身体能力の向上につながるのです。
米国のIT大手グーグル社は数年前、「心理的安全性が確保されていないチームは成果を出せない」という社内調査の結果を公表しました。何でも話せる上司や同僚のいない、コミュニケーションのうまくいっていないチームに企業価値を創生できないと。
AIとの協働 発想力大切
昭和の常識は「無駄話せずに働け」。でも、意図的に言葉を発するのを止めると、脳は次第に発想そのものを停止します。
単純な作業をこなすだけなら、それでも良かったのですが、これからはAIがそれらを代行し、私たちに一番求められるのは、AIを使いこなす豊かな発想力なのです。
雑談につながる「会話のトス」を
そこで組織のリーダーにお薦めしたいのが、縦型(合理的で迅速)と横型(共感力)を備えた「ハイブリッド・コミュニケーション」です。日ごろから何気ない会話を重ね、気心が通じ合う関係を築くことで部下はストレスなく働くことができます。上司は雑談につながる「会話のトス」を出すよう心がけてください。苦労話や自慢話は厳禁です。
家庭でも職場でも「共感」と「ねぎらい」を意識して、心理的安全性を守っていけるよう努めてください。子育て中ならば「どうして?」を「どうしたの?」に言い換え、相手の心根を正す方向から、状況を案ずる方向へ変えていきましょう。
また、1997年生まれ以降の世代に、うなずいたり、相手と同じ表情をしたりといったコミュニケーションの共鳴反応が弱い人が増えています。幼少期の自由遊びの時間が少なくなっていることで、他者と連動する体が少なくなっているからだと思われます。
反応の弱い部下がいても「話、聞いているの?」「何でやらないの?」などと言わないように。率直に「これをやってね」と繰り返し伝えれば、きちんとやるようになりますよ。
働き方・生き方紹介サイト
「ひむかWOMAN」活用を
宮崎県は、県内のさまざまな分野で活躍している女性の働き方・生き方を紹介するサイト「ひむかWOMAN」を開設しています。直接会って経験談やアドバイスを聞ける仕組みも導入しており、活用を呼びかけています。
サイトは2017年に開設。「会社・事業所勤務」「起業・経営」「リーダー・管理職」「社会貢献・NPO活動」「農林漁業」など分野ごとに計126人が登録されています。仕事と子育て・介護を両立している人、専業主婦を経て再就職した人など多様な働き方・生き方を紹介。このうち2人には「面談可」のマークが付いており、直接会って話を聞くことができます。
面談できるのは、県内に住所、活動拠点を有する女性(グループ可)や事業所・団体、キャリア教育を行う学校などで、サイトを通じて申し込めます。会場は宮崎市宮田町の県男女共同参画センターか、申し込んだ人が準備した場所。料金は無料です。
「ひむかWOMAN」HP