至る所で雨漏り 延岡竜巻、住宅復旧遠く
2019年10月4日
ブルーシートに覆われた屋根、雨染みが浮かんだ壁紙―。台風17号の接近に伴う竜巻被害に見舞われた延岡市では、被災者が復旧のめどが立たない住宅で、次の台風や大雨におびえながら暮らしている。保険の見積もりが追い付かず修理ができず、降り込んだ雨で天井が抜けた住宅や、11月まで改修を待つことになった被災者も。被災地では不安な日々が続いている。
「9月22日の竜巻の後も雨ばかりで、雨漏りに困っていました」。久しぶりの晴天となった10月3日、榊原はる子さん(66)=桜ケ丘3丁目=は少しだけ表情を緩めた。
屋根は軒ごと吹き飛ばされ、窓ガラスの破片で右手に15針縫うけがを負った。屋根をブルーシートで覆ったが、その後の大雨は容赦なく襲い掛かった。「隙間から雨が入り込み、重みで天井が抜け落ちたんです」。案内してくれた2階の寝室は天井に約2メートル四方の大きな穴が開き、日差しを受けたブルーシートが屋根裏の柱やはりを青く照らしていた。
いつ来るか分からない台風や大雨に備えて屋根のブルーシートを二重、三重にした。寝室にもブルーシートや吸水シートを敷いている。「少し強い風が吹いただけでも怖い」。包帯を巻いた手をさすると顔をこわばらせた。
被災地の周辺では屋根の補修工事はほとんど進んでいない。元大工の河野孝さん(70)=桜ケ丘2丁目=は業者から「1年近くかかるかもしれない」と言われ、腹をくくった。「技術はあるからもう自分でやるしかない」。危険は承知だが、命綱を腰に巻き、取り寄せた瓦を屋根に並べている。
「もう疲れた。家の中まで雨にぬれるのは苦痛」。近くの小坂浅文さん(77)方は、天井や壁の至る所で染みやたわみが生じ、一緒に暮らす小学生の孫の教科書も水浸しになった。
屋根だけでなく、天井や壁も全部張り替えなければならない。「工事費がいくらになるのか。保険金がどの程度下りるのか」。見積もりすら1カ月先と告げられ、生活設計も立たない。背中に全てのことが重くのしかかる。
竜巻で509棟(2日現在)の住宅が被害を受けた。出口の見えない中で被災者は心と体を消耗している。
【写真】雨漏りで天井が抜け落ちた2階寝室で、床に敷いていた吸水シートを片付ける榊原はる子さん=3日午後、延岡市桜ケ丘3丁目
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