南海トラフ津波3メートル以上「30年内26%」 県内自治体啓発に苦慮 「情報不足」過小評価恐れ
2020年2月5日
南海トラフ巨大地震に伴う大津波の危険性を確率で示した政府の地震調査委員会の発表を巡り、県内の沿岸自治体が住民への啓発に頭を悩ませている。これまでは政府の中央防災会議が示す10メートル超の最大津波高を想定して防災対策を進めてきたが、今回の調査は津波高が3メートル以上など「起こりやすそうな津波」の確率を予測。津波が襲う具体的な場所は明らかにされず、自治体関係者は「誤った解釈が津波被害の過小評価につながりかねない」と、結果の活用に慎重だ。
調査委は、今後30年以内に津波に襲われる確率を3メートル、5メートル、10メートルの高さごとに、「26%以上」「6~26%未満」「6%未満」の3段階で評価し、1月24日に発表。マグニチュード(M)8~9級の巨大地震で宮崎、日向市を含む全国の71市区町村を、木造住宅が全壊し始めるとされる高さ3メートル以上の津波が襲う確率が「30年以内に26%以上」とした。
宮崎市は南海トラフ巨大地震発生時の最大津波高を16メートルと想定しているが、「26%という確率が高いのか低いのかが分かりにくい」などとして、最大津波高を想定した防災対策を継続する方針。調査委の結果を官民の防災対策に活用するかは今後検討する考えで、市危機管理課の藤浪透課長は「説明を間違えば住民が誤った認識を持つ。しっかり分析したい」と話す。
情報不足を指摘する声もある。宮崎、日向市では3メートル以上の津波が襲う確率が一部地点で「26%以上」とされたが、どの地域が該当するかは公表されていない。
日向市防災推進課の福永鉄治課長は「同じ『26%以上』の地点でも、住民がいない場所と市街地では防災対策は大きく異なる。公表された情報だけでは住民への説明は難しく、今回の結果を地方自治体の防災対策に生かす手段まで明らかにしてほしい」と求める。
県危機管理課の長尾拓主任主事は「避難するかを判断する材料は増えたが、県民の混乱は避けないといけない。活用方法があるのか、対象の各市町と協議していく」と話している。
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