日向灘地震 想定見直し 県20年度当初予算案
2020年2月14日
本県に大きな影響を及ぼす可能性がある日向灘地震の被害想定を見直そうと、県は13日に公表した2020年度一般会計当初予算案に調査費1400万円を計上した。現在の想定は津波対策への考え方が大きく変わる契機となった東日本大震災以前のもので、防災関係者から見直しを求める声が上がっていた。南海トラフ巨大地震の被害想定で用いた新しい算出方法で揺れの大きさや津波の到達時間、浸水地域などを20年度中にまとめる方針。識者は県民への啓発を求めている。
11年の東日本大震災以降、国は南海トラフ巨大地震の被害想定を見直し、県は「津波は最大17メートル、最短14分で到達」とする独自の想定を発表。この想定に基づき県と沿岸市町は津波避難タワーの整備などを進めた。しかし、数百年置きと考えられている南海トラフ巨大地震より発生頻度が高いとされる日向灘地震の想定は06年が最後。県は今回の事業で想定を見直して新たな対策を講じ、啓発に力を入れる考えだ。
本県では昨年、日向灘を震源とする地震が相次ぎ、3月と5月に延岡市で震度4、宮崎、都城市は5月に震度5弱を観測。NPO法人県防災士ネットワークの伊藤照夫事務局長(71)は「日向灘地震への関心は高まっている」と語る。同法人が今月9日、日向灘地震への備えをテーマに都農町で開いた講演会には定員100人を上回る人が訪れ、立ち見も出たという。
沿岸部にある宮崎市田吉姥ケ島(うばがしま)自治会の伊豆久幸会長(73)は「津波被害への関心は人によって大きく違うが、日向灘地震の想定が詳細になれば、より身に迫った危機として感じる人も増えるのでは」と期待。
同自治会を含む赤江地区で住民主体の防災組織づくりに携わる同法人の福元孝典理事(61)は「新たな想定に基づき県や市町村はハード、ソフト両面での対策を進めてほしい。住民も地域の備えは何が必要かを考えるべきだ」と訴える。
京都大防災研究所宮崎観測所の山下裕亮助教(観測地震学)は「近年は南海トラフ巨大地震ばかりが注目されてきたが、宮崎では日向灘地震の方が発生頻度が高く、被害想定の見直しにより県民に危険性を知ってほしい」と強調。
宮崎大の原田隆典名誉教授(地震工学)は「日向灘地震に伴う津波は南海トラフ巨大地震より低くなると予測されるので、県は住民が安心してしまわないような啓発が必要」と話している。
【写真】南海トラフ巨大地震の浸水被害想定に基づき、津波避難タワー(手前右)が整備されている宮崎市佐土原町の沿岸部=13日午前(ドローンで撮影)
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