台風10号椎葉土砂崩れ 中腹で発生上部も崩落 国交省専門家チーム分析
2020年9月9日
椎葉村下福良で発生した土砂崩れ現場を8日視察した国土交通省の土砂災害専門家(TEC-FORCE高度技術指導班)は、同村役場で会見を開いた。土砂崩れはまず現場の中腹で発生し、不安定になった上部も崩れ落ちる2段階で起きたと説明した。
視察したのは、同省国土技術政策総合研究所の山越隆雄・砂防研究室長ら2人。
今回の土砂崩れについて、山越室長は「土砂崩れが起きた現場の中腹は谷状で、雨水が集まりやすい地形だった。水を多く含んだ土砂が中腹から流れ落ち、不安定になったその上部も崩れ落ちた」と分析。雨が降り始めた5日午前2時から、土砂崩れが発生したとみられる6日午後8時までの累積雨量は、394ミリに達していた。
長さ約200メートル、幅約20~40メートルの崩落地の上には、作業道が通っていたため、さらに上部の「崩壊は止まった」と推測する。
建設会社「相生(あいおい)組」の事務所と相生秀樹社長(70)の自宅があった場所に堆積している土砂はごく一部。大部分は十根川に流れ、残りは幅約30メートルの川を越えて、川の両岸よりも約10メートル高い国道に到達した。
土砂や流木は平均勾配34度の急斜面を勢いよく流れ落ち、ガードレールを突き破った。山越室長は「土砂が流れ落ちる速度はかなり速かった」とみている。
現場の斜面にはまだ大量に土砂があり、少雨で崩れてくる恐れも。急斜面のため、山越室長は「少しの風でも落石被害につながりかねず、注意が必要」と強調した。
8日は永山寛理副知事も現地を視察。「災害の甚大さを実感した。国の調査や二次災害の危険性を踏まえ、安否不明者の救出を第一に取り組みたい」と語った。
九州電力宮崎支店は8日、台風10号の影響で発生した県内の停電を全て解消したと発表した。
同支店によると、7日午前2時に最大5万7050戸が停電した。
台風10号の接近に伴い、椎葉村では6日に土砂崩れが発生し、現在も4人の行方が分かっていない。本県では大雨時にたびたび土砂崩れが起きており、専門家は「県内どこでも起こりうる」と指摘。今後も台風シーズンが続くことから、注意を呼び掛けている。
宮崎大工学部の村上啓介教授(防災工学)によると、本県は降水量が多い上に中山間地域を中心に急峻(きゅうしゅん)な地形が多く、土砂災害が起こりやすい要因がそろっている。過去に県内で起きた土砂災害の7割以上は降雨が原因とされ、その多くが台風による大雨だった。同村では2005年、台風14号による土砂崩れで3人が亡くなっている。
村上教授は「雨量が500ミリを超えれば、より大規模な『深層崩壊』も起こりうる」と警告。「土砂災害警戒区域など特に危険性が高い地域では防災情報に注意し、早めの避難を心掛けてほしい」と話している。
【写真】台風10号の影響で土砂崩れが発生した現場=8日午後2時、椎葉村下福良(ドローン撮影、写真5枚を合成)
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