椎葉土砂崩れ3人不明 休日返上懸命の捜索
2020年9月22日
台風10号による土砂崩れで1人が死亡、3人が行方不明となっている椎葉村では、21日も村民や村外の建設業者ら約30人がベトナム人技能実習生の遺体が発見された十根川下流を中心とした捜索や、がれきの撤去作業に当たったが、3人の発見には至らなかった。22日は午前8時から捜索を再開する。
遺体発見現場付近を含む3カ所で、重機約10台で川に堆積した土砂を掘り起こしたほか、発生現場から約6キロの岩屋戸ダム、同19キロの塚原ダムでは村消防団がダム湖を捜索。土砂にのまれた同村下福良の建設会社「相生(あいおい)組」事務所などでは、同社の従業員らががれきや倒木を撤去した。
休日を返上し捜索に加わった諸塚村の建設業大橋泰介さん(31)は「休日だからこそ捜索に最大限の時間を費やせる。帰りを待つ家族のためにも何とか見つけ出したい」と話していた。
村によると土砂崩れは6日夜に発生。自力で脱出した同社社長の相生秀樹さん(70)が肋骨を折るけがを負い、同社のベトナム人技能実習生グエン・ヒュー・トアンさん(22)は17日、遺体で発見された。相生社長の妻勝子さん(68)、長男泰孝さん(39)、実習生チャン・コン・ロンさん(23)が行方不明となっている。
全国の砂防研究者らでつくる「砂防学会」(会長・藤田正治京都大防災研究所教授)は21日、椎葉村で台風10号により発生した土砂崩れの現場を緊急調査した。調査団は「土砂崩れは斜面中腹で発生した可能性が高い」と分析。8日に現地視察した国土交通省の土砂災害専門家(TEC-FORCE高度技術指導班)と同様の見方を示した。
同日は藤田会長や宮崎大農学部の清水収(おさむ)教授、鹿児島大農学部の地頭薗(じとうその)隆教授ら6人が現地入り。崩落した斜面に登り被害規模を計測したほか、地層の構造や崩落の直接的な原因とみられる湧き水の発生状況などを調べた。
調査団によると、災害発生場所の斜面には中腹に傾斜が緩やかな部分があり、過去に土砂が堆積していたと推測。そこに台風の大雨で大量の水が流れ込み、土砂を一気に押し流した表層崩壊の可能性があると指摘した。
藤田会長は「今回の災害現場と同じような急傾斜地は全国に点在しており、避難方法など検証が必要。メカニズムを詳しく調べ対策に役立てたい」と話した。
【写真】土砂崩れで倒壊した相生組事務所などのがれきを撤去する同社従業員ら=21日午前、椎葉村下福良
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