がん検診について
宮崎県医師会 放射線科医会 杜若陽祐
2024年12月05日掲載
がん検診には大きく2つのシステムがあります。一つは自治体が行う対策型検診(住民検診型)で、自営業者や退職後の方が対象です。この検診は集団の死亡率を下げる目的で行われ、対象となるのは肺、胃、乳腺、大腸、子宮の5つの部位のがんです。もう一つは職場や個人が行う検診で、任意型検診 (人間ドック型)と呼ばれています。個人の死亡リスクを下げる目的に行われ、5つの部位の他に、肝臓や腎臓などの検査も行われることがあります。
ここでは肺と乳房の検診に用いられる画像検査の特徴について紹介します。
肺がんでは胸部X線写真が用いられます。簡便で、有用な検査法ですが、心臓や横隔膜などに重なった部分のがんが見えにくい欠点があります。そこで、最近では低線量CTを用いた検診も行われ、早期がんの発見に有用です。しかし、低線量CTは胸部写真より被ばく線量が多いため、50歳以上で喫煙指数(1日のタバコ本数×喫煙年数)が600以上の方など、肺がんリスクの高い方にお勧めしています。
乳がんではマンモグラフィが用いられます。この検査はがんに特有な石灰化を検出でき、世界的に有効性が認められた方法です。特に乳腺組織が少なくなった高齢者や脂肪性乳房の方に有用です。一方、日本でよく用いられている乳腺エコーは被ばくがないことや腫瘤を見つけやすい利点があり、若い人や乳腺組織の多い方に有用です。しかし、がんによる石灰化を検出しにくい弱点があります。乳がん検診ではマンモグラフィを第一とし、乳腺組織の多い方は乳腺エコーも併用してください。なお、以前行われていた乳房触診単独による検診はお勧めできません。
肺がんや乳がんの検診では画像検査が主役ですが、血液(腫瘍マーカー)や尿を使った検査も行われることがあります。これらの検査はがんの早期には異常値を示さないことが多く、良性疾患や喫煙でも異常値を示すこともあります。がん検診では有効性の認められた検査を診断専門医がいる施設で受けることをお勧めします。