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火山灰で陶器、れんが 都城の業者ら再利用試みる

2011年2月21日
 霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火活動で住民の頭を悩ます降灰。これを陶器やれんがなどの窯業に有効活用する動きが地元で始まっている。れんが作りでは火山灰を2割混ぜると強度が逆に増したという実験結果もあり、3月には商品化する予定。都城市や高原町の灰捨て場には今も大量の火山灰が運び込まれて処理に困っている状態だけに、「厄介者」を逆手に取って地域の活路につなげたい考えだ。

 「火山灰を使えないか」。都城市吉之元町で陶器を制作している「都城焼窯元」の宇都野晄さん(65)は今月初め、灰を粘土に混ぜて皿や茶わんを作ってみた。灰に含まれた鉄分が黒っぽいごま状の模様をつくりだし、陶器の上薬にも使えることが分かった。

 吉之元町は土石流警戒地域で噴火後はめっきりにぎわいを失った。「厄介者だが、火山灰を使って新商品を開発すれば起爆剤になるかもしれない」。宇都野さんは4月にも商品化できるように試行錯誤を繰り返している。

 火山灰を使ったれんが作りに挑戦しているのは宮崎高砂工業(同市山之口町)。見た目も通常の粘土れんがと変わりなく、灰を混ぜることで強度が高まったという。現在は含有率3割の試作品作りに取り組んでおり、同社は「少しでも多くの灰が処理できるようにしたい。3月には商品にする」と意気込んでいる。

 こうした地元の取り組みとは別に、県工業技術センター(宮崎市)は新燃岳の火山灰を簡易分析し、有効活用の参考となる基礎データを収集。三宅島(東京)の噴火による降灰と似て鉄の多い成分だったことが判明した。

 三宅島では灰でガラス製品を作った際に鉄分が生み出した独特の青色が特徴となり、都内のデパートで年間3万個近くを売り上げるヒット商品になったという。三宅村企業課の竹山智洋見課長は「今では原料の灰が不足している。有効活用を見越して雨で流れないように確保していたほうがいい」と助言する。

 都城市は県外の大学に研究材料として灰を送っており、再利用の方法を検討。すでに県外の企業などから肥料やセメント、学校の教材に使えないかという問い合わせが相次いでいるという。

 これまでの降灰で都城市山田町の灰捨て場には3万3千立方メートル以上が運び込まれ、雨で流出する恐れがあるとして受け入れを一時停止。高原町の霧島美化センターも個人収集分しか搬入できない状態となっている。

【写真】新燃岳の火山灰を利用して作られた陶器=都城市吉之元町・都城焼窯元