国内外ニュース

信念胸に、変化の力を 万雷の拍手、眼前に仲間 

2024年12月10日22時18分
 【オスロ共同】最前列で仲間が見守る中、世界に向けて語りかけた。「核兵器は人類と共存させてはならないという信念が根付き、核政策を変えさせる力になるよう願う」。オスロ市庁舎ホールでのノーベル平和賞授賞式。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中熙巳さん(92)の演説に、万雷の拍手が響いた。

 長崎での被爆体験を語った。街は「黒く焼き尽くされた廃虚」となり、遺体は放置され、負傷者に救護はない。「無感動となり、人間らしい心を閉ざした」。13歳だった自らの内面を明かした。

 孤独、病苦、生活苦、偏見と差別…。被爆者が苦しみから立ち上げた被団協の歴史を振り返り、「核兵器の廃絶と原爆被害に対する国の補償」という二つの運動の柱を強調。「もう一度繰り返します」と前置きし「原爆で亡くなった死者に対する償いは日本政府は全くしていない」と批判した。

 亡き人の写真を手に聞き入る人、和服姿の人、目をつむり穏やかな表情の人、誇らしげに拍手する人。会場の被爆者たちは豊かな表情を見せた。
【写真】 PV会場でノーベル平和賞の授賞式を見る被爆者ら=10日、オスロ(共同)