2025年01月06日17時47分
冬の冷たい海に投げ出された乗員をロープ代わりの毛布を使い、次々と助け上げていく。6日未明、茨城県の鹿島港の沖合で発生した漁船の転覆事故では、近くにいた仲間の漁船などが懸命の救助活動を続けた。自身も船頭を務める大熊和也さん(54)は「30年近く漁師をしているが、こんな事故は初めて」と語った。
「船が沈みそうだ。助けてほしい」。第8大浜丸と一緒に年明け初のイワシ漁をしていた大熊さんは、緊急事態を告げる無線を聞き、すぐに救助へ向かった。20~30分後には現場の海域に着いたが、既に船は転覆した後。集まった他の漁船と共に真っ黒い海面をライトで照らし、海に落ちた乗員を小型のボートへ引き上げたが、冷たい海水が体温を奪ったせいか「1人は自分の名前がやっと言えるぐらい。2人は口から泡を吹いていて、呼びかけにも反応がなかった」という。
大熊さんは3人を自分の漁船に乗せ替えて、意識のあった1人には温かいシャワーを浴びさせてから着替えをさせた。
乗員20人のうち17人は救助され、2人が死亡。3人は行方不明だ。
【写真】 取材に応じる、救助活動に当たった大熊和也さん=6日午後1時26分、茨城県北茨城市