官房長官の裏金疑惑
2023年12月9日
◆説明拒むなら職務遂行無理◆
自らに降りかかった「政治とカネ」に絡む疑惑の説明を拒むなら、内閣の要としての資質を欠き、職務を遂行していくのは無理だろう。噴出する政治への強い不信を少しでも拭いたいならば、速やかに実態をつまびらかにした上で、出処進退を決断すべきだ。
自民党派閥の政治資金パーティー問題を巡り、安倍派(清和政策研究会)に所属する松野博一官房長官が最近5年間にわたり、派閥からパーティー券の売り上げ計1千万円超のキックバック(還流)を、政治資金収支報告書に記載せずに受けていた疑惑が浮上した。
記者会見や国会で事実関係を何度問われても、松野氏は派閥で確認中、東京地検特捜部の捜査中を理由に回答を拒否、辞任する考えのないことを繰り返した。任命権者の岸田文雄首相も松野氏の更迭を否定した。こうした姿勢が政治の信頼失墜に拍車をかけており、政権発足以降、最大の危機と言える。
派閥パーティーでは、5派閥が収入の過少記載を刑事告発され、最大派閥の安倍派では、ノルマ以上のパーティー券を販売した所属議員への還流問題が表面化した。にもかかわらず、政権の判断は甘く、遅かった。
過少記載が発覚しても説明責任は各派閥に丸投げ。安倍派の裏金づくりが報じられても、岸田首相はどこかひとごとで、松野氏も安倍派の事務総長経験者でありながら「政府の立場で答えは差し控える」と木で鼻をくくった発言を連発した。
しかし、世論の視線が厳しさを増したことから、首相はようやく「強い危機感」を示して当面のパーティーの自粛を申し合わせ、自身が派閥会長を退き派閥を離脱する考えを表明した。
年末は2024年度予算編成や税制改正、異次元の少子化対策の財源問題など重い政策課題への取り組みが控える。疑惑を抱え、説明責任を果たそうとしない官房長官の下で乗り切れるのか。パーティーを自粛しても派閥を離脱しても、国民は納得しないだろう。
通常の寄付は報告書に5万円超の寄付者の記載が義務付けられるが、パーティー券購入は20万円超のため「裏金の温床」とも指摘されてきた。
政治資金規正法は、報告書の内容が正確に記載されているという「性善説」に立つ。それが大きく揺らいだ以上、規制の強化も必要だろう。
パーティー禁止に踏み込むのが望ましいが、少なくともパーティー券の購入者の記載基準を「5万円超」に引き下げ、報告書の虚偽記載を厳罰化する。実態を解明し、規正法を抜本的に改正しない限り、地に落ちた信頼を取り戻せない。
自らに降りかかった「政治とカネ」に絡む疑惑の説明を拒むなら、内閣の要としての資質を欠き、職務を遂行していくのは無理だろう。噴出する政治への強い不信を少しでも拭いたいならば、速やかに実態をつまびらかにした上で、出処進退を決断すべきだ。
自民党派閥の政治資金パーティー問題を巡り、安倍派(清和政策研究会)に所属する松野博一官房長官が最近5年間にわたり、派閥からパーティー券の売り上げ計1千万円超のキックバック(還流)を、政治資金収支報告書に記載せずに受けていた疑惑が浮上した。
記者会見や国会で事実関係を何度問われても、松野氏は派閥で確認中、東京地検特捜部の捜査中を理由に回答を拒否、辞任する考えのないことを繰り返した。任命権者の岸田文雄首相も松野氏の更迭を否定した。こうした姿勢が政治の信頼失墜に拍車をかけており、政権発足以降、最大の危機と言える。
派閥パーティーでは、5派閥が収入の過少記載を刑事告発され、最大派閥の安倍派では、ノルマ以上のパーティー券を販売した所属議員への還流問題が表面化した。にもかかわらず、政権の判断は甘く、遅かった。
過少記載が発覚しても説明責任は各派閥に丸投げ。安倍派の裏金づくりが報じられても、岸田首相はどこかひとごとで、松野氏も安倍派の事務総長経験者でありながら「政府の立場で答えは差し控える」と木で鼻をくくった発言を連発した。
しかし、世論の視線が厳しさを増したことから、首相はようやく「強い危機感」を示して当面のパーティーの自粛を申し合わせ、自身が派閥会長を退き派閥を離脱する考えを表明した。
年末は2024年度予算編成や税制改正、異次元の少子化対策の財源問題など重い政策課題への取り組みが控える。疑惑を抱え、説明責任を果たそうとしない官房長官の下で乗り切れるのか。パーティーを自粛しても派閥を離脱しても、国民は納得しないだろう。
通常の寄付は報告書に5万円超の寄付者の記載が義務付けられるが、パーティー券購入は20万円超のため「裏金の温床」とも指摘されてきた。
政治資金規正法は、報告書の内容が正確に記載されているという「性善説」に立つ。それが大きく揺らいだ以上、規制の強化も必要だろう。
パーティー禁止に踏み込むのが望ましいが、少なくともパーティー券の購入者の記載基準を「5万円超」に引き下げ、報告書の虚偽記載を厳罰化する。実態を解明し、規正法を抜本的に改正しない限り、地に落ちた信頼を取り戻せない。