震災で予備費倍増
2024年1月18日
◆財政面への配慮が見えない◆
能登半島地震は死者が230人を超え、なお多くの被災者が避難生活を送る。被災者の救援をはじめ生活再建、インフラの復旧などに切れ目なく手を差し伸べていかねばならない。
その際に肝心なのが国の財政的なバックアップである。政府は2024年度予算案の一般予備費を5千億円増やし、計1兆円とすることを決めた。26日召集の通常国会に提出される。
予算案は昨年末に閣議決定済みであり、内容を変えて決定し直すのは異例と言える。迅速な災害対応は予備費の本領であり納得できるものだが、財政面の工夫や配慮はあって当然だ。
近年、新型コロナウイルス対応などで「政権のポケットマネー」のような予備費の使い方が常態化している。今回も、当初予算案の組み替えによる単純な予備費増額が妥当だったのか、議論の余地がある。
一つには、23年度予算の一般予備費がまだ4600億円程度残っている点である。9日には被災地の要望を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」強化のため約47億円の支出を決めた。年度内に必要となる資金は、残りの予備費で対応可能との見方が多い。
二つ目は、24年度予算案に一般予備費とは分けて、物価高対策などに特定した予備費が1兆円盛り込まれていた点だ。どちらも現時点で支出が確定しているわけではないのだから、一般予備費を増額する分、特定予備費を抑制してよかった。
なぜなら単純に予備費を加算した結果、歳入不足を補う新規の国債発行が35兆4490億円へ膨らんだからだ。主要国最悪の財政状況にあり、金利上昇局面を迎えている中で、財政面の配慮がそこには見えない。
過去には、災害支援の財源確保で補正予算を速やかに編成した例がある。16年の熊本地震では、1カ月後に7千億円の予備費追加を柱とする補正予算案を決定、時間を置かずに国会で成立した。
補正の編成は必ずしも時間を要するわけではなく、石川県知事も「数兆円規模で1カ月以内」の補正を政府に要望している。震災対応には野党も前向きな姿勢である点などを合わせれば、当初予算での増額とは別の選択肢が考えられた。
経済協力開発機構(OECD)は今月公表の日本に向けた報告書で、予備費や補正予算への依存に警鐘を鳴らした。財政の深刻さに、海外の厳しい目が向けられていることを忘れてはならない。
わが国は今後も地震や豪雨の天災が避けられない。その際に不安なく財政出動ができるよう、財政の健全化を急がねばならない。
能登半島地震は死者が230人を超え、なお多くの被災者が避難生活を送る。被災者の救援をはじめ生活再建、インフラの復旧などに切れ目なく手を差し伸べていかねばならない。
その際に肝心なのが国の財政的なバックアップである。政府は2024年度予算案の一般予備費を5千億円増やし、計1兆円とすることを決めた。26日召集の通常国会に提出される。
予算案は昨年末に閣議決定済みであり、内容を変えて決定し直すのは異例と言える。迅速な災害対応は予備費の本領であり納得できるものだが、財政面の工夫や配慮はあって当然だ。
近年、新型コロナウイルス対応などで「政権のポケットマネー」のような予備費の使い方が常態化している。今回も、当初予算案の組み替えによる単純な予備費増額が妥当だったのか、議論の余地がある。
一つには、23年度予算の一般予備費がまだ4600億円程度残っている点である。9日には被災地の要望を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」強化のため約47億円の支出を決めた。年度内に必要となる資金は、残りの予備費で対応可能との見方が多い。
二つ目は、24年度予算案に一般予備費とは分けて、物価高対策などに特定した予備費が1兆円盛り込まれていた点だ。どちらも現時点で支出が確定しているわけではないのだから、一般予備費を増額する分、特定予備費を抑制してよかった。
なぜなら単純に予備費を加算した結果、歳入不足を補う新規の国債発行が35兆4490億円へ膨らんだからだ。主要国最悪の財政状況にあり、金利上昇局面を迎えている中で、財政面の配慮がそこには見えない。
過去には、災害支援の財源確保で補正予算を速やかに編成した例がある。16年の熊本地震では、1カ月後に7千億円の予備費追加を柱とする補正予算案を決定、時間を置かずに国会で成立した。
補正の編成は必ずしも時間を要するわけではなく、石川県知事も「数兆円規模で1カ月以内」の補正を政府に要望している。震災対応には野党も前向きな姿勢である点などを合わせれば、当初予算での増額とは別の選択肢が考えられた。
経済協力開発機構(OECD)は今月公表の日本に向けた報告書で、予備費や補正予算への依存に警鐘を鳴らした。財政の深刻さに、海外の厳しい目が向けられていることを忘れてはならない。
わが国は今後も地震や豪雨の天災が避けられない。その際に不安なく財政出動ができるよう、財政の健全化を急がねばならない。