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備えよ 新燃岳再噴火【中】降灰・噴石

2012年1月26日
■土石流への懸念啓発

 昨年、霧島連山・新燃岳(1421メートル)の噴火で、周辺自治体は桜島の年間降灰量のおよそ10倍以上に当たる大量の灰や噴石に見舞われた。市民の持ち込み分も含め都城市が処理した灰の量は、昨年10月末までに約8万立方メートル。5センチ以上の灰が積もった路上もあり、埋め立てを完了するのに約3カ月を要した。

 「1月26日午後から灰が降り始め、帰宅するときは前がほとんど見えなかった」。同市の栄留誠一新燃岳対策監は噴火当時を振り返る。事故防止や健康への配慮のため不可欠な灰除去だが、市道の状況把握や手配に手間取り、協定に基づき都城地区建設業協会に作業を依頼できたのは大量降灰から3、4日後だった。

 同市は再噴火に備え、昨年12月22日に道路降灰除去対策の机上訓練を初めて実施した。職員を各市道に派遣。無線で伝えられた情報から降灰分布図を作り、優先度を判断して作業を開始する初動態勢を確認した。栄留対策監は「48時間以内に着手し、前回の2倍のスピードで機能を回復する」と力をこめる。

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 再噴火で大量の降灰があった場合、新燃岳周辺には再び、土石流の危険性が高まることが懸念される。これまで避難準備情報や避難勧告などは、市が各自治公民館館長に無線連絡。そこから電話や巡回により各戸に伝えられていた。同市は3月末までに、山田町と西岳地区の1148世帯に防災無線の戸別受信機を設置し、情報を伝達する。

 避難勧告発令のたび、避難率の低さが課題となっており、市は「情報が直接住民に伝わることで避難率向上につながるのではないか」と期待する。しかし、同市西岳地区自治公民館連絡協議会の坂元和雄連協長(63)は「無線の整備はありがたいが、住民の防災に対する意識が向上しないと避難率は上がらない。行政から住民への啓発をさらに強めてほしい」と注文する。

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 昨年の噴火では三股町にも約1センチの灰が積もった。役場には灰の処理に関する問い合わせが相次いだ教訓から、町は、灰の収集場所を紹介、除灰作業への協力を求めるチラシ7千枚を配布した。

 太陽光パネルや車の窓ガラスを割るなどの噴石被害が約700件に上った小林市は、市内小中学校10校の児童生徒にヘルメット2550個を無償貸与。空振対策としてほとんどの小中学校の窓ガラスにテープを張るなどしている。

 えびの市・えびの高原では、観光客らを対象にした噴石対策を取る。高原内の自主防災組織が観光客を屋内に避難誘導するための行動計画を策定、訓練を重ねる。同市も2013年度を予定していた同高原への防災無線屋外スピーカー新設を12年度中に前倒しする計画だ。

【写真】都城市が昨年12月に実施した道路降灰除去対策訓練。迅速な降灰処理へ初動態勢を確認した=都城市役所