防災ニュース
台風10号本県接近 「被害なく過ぎて」 早めに避難不安な夜
2020年9月7日
「最小限の被害で過ぎ去って」。大型で非常に強い台風10号が本県に接近した6日、県内の避難所には風雨が強まる前の朝早くから住民が次々と身を寄せるなどして警戒した。これまで台風や豪雨による被害に見舞われた地域の住民からは「また自宅に戻れなくなるのでは」と切実な声も。新型コロナウイルス感染への注意も求められ、住民は不安と緊張感を抱えながら一夜を過ごした。
各避難所ではコロナ対策として消毒液設置や検温などを徹底。このうち、宮崎市の小松台小体育館には開設前の午前8時ごろから住民が訪れ始めた。13人の死者が出た2005年の台風14号で自宅が浸水した同市小松の比恵島澄夫さん(84)は「自宅にいたいが命には代えられない。再び何もかもなくなるのはもう嫌だ。被害が出ないよう祈るしかない」と語った。
同市熊野の木花公民館には午前10時半時点で17人が避難。近くに住む上村都子さん(81)は「これまで以上の勢力の台風と聞いて用心した。コロナも心配なのでマスクを外せず、気を緩められない」と話した。
7月の九州豪雨で村道2カ所が崩落し、集落内に住民が一時孤立するなどした西米良村板谷の八重地区。一人暮らしの上米良一夫さん(71)は午前中から近くの避難所に身を寄せ、「村道は土のうを積んで仮復旧したままの状態。大雨で再び壊れ、自宅に戻れない事態にならなければいいのだが」と不安を口にした。
延岡市北川町曽立地区では16年から3年連続で内水氾濫が起こった。浸水被害を経験した同地区の介護老人保健施設「螢邑苑(けいゆうえん)」には約80人の入所者がおり、数日前から入り口に土のうを積むなど備えてきた。施設長の黒木正樹さん(49)は「できる限りの対策を取ったが、どこまで水位が上がるか不安」と気をもんだ。
午前9時に開設した日南総合運動公園多目的体育館は正午までに約300人が避難し、「3密」を避けるため市が簡易テントを用意。夫婦で避難した70代女性は「身動きが取れなくなってからでは遅いので開設と同時に来た。体育館には冷房がないので熱中症にも注意したい」と話した。
川南町は午前10時、役場敷地内の農村環境改善センターを避難所として開設。同町平田の大山義春さん(71)は「警戒が呼び掛けられ、危ないと感じ初めて避難した。とにかく最小限の被害で過ぎ去ってほしい」と祈るように話した。
本県関係13ダム事前放流を実施
台風10号による洪水被害を防ぐため、6日までに本県関係では、大淀川など3水系の計13ダムで事前放流が実施された。国土交通省宮崎河川国道事務所などによると、同日正午までに放流を終え、大雨をせき止める空き容量を増やした。
13ダムの内訳は、大淀川水系が宮崎、都城、小林市、綾町、鹿児島県曽於市の7ダム、小丸川水系が木城、川南、美郷町の5ダム、五ケ瀬川水系が日之影町の1ダム。農業や発電用などのダムで、早い所では4日から放流を開始していた。
同事務所は「降雨量がピークを迎える前に事前放流を終えられた。下流の氾濫リスクの低減につなげたい」としている。
事前放流は2018年7月の西日本豪雨や、昨年10月の台風19号を機に体制整備が進んだ。本県関係では、1級河川3水系30ダムで事前放流に必要な治水協定を締結している。
県内避難所満員相次ぐ コロナ対策で定員減少
新型コロナウイルス感染対策で収容定員を減らした影響で、台風10号に備えて県内の自治体が開設した避難所が満員になるケースが相次いだ。各自治体は急きょ、新たな避難所を開設。ホームページなどで別の施設への避難を呼び掛けるなど対応に追われた。
宮崎市では午前中に小松台小、青島地区交流センターなど4カ所が満員に。午後9時時点で、開設した106カ所のうち21カ所で訪れた人が定員を超えたため、収容に余裕がある近隣の施設を紹介した。
市地域安全課の齋藤裕美子課長は「コロナ対策による定員減に加え、今回は台風10号に対する防災意識の向上で早めに避難したケースが多い」と分析した。
串間市では当初、市民総合体育館など5カ所を予定していたが、風雨が強くなるにつれて避難者が詰め掛け、全施設満員に。福島高体育館や都井小など6カ所を新たに開設した。西都市では5施設が満員となり、1施設を追加した。
このほか、午後5時現在で都城、日向、小林、えびの市、高鍋、木城、新富、高千穂、日之影、川南町などでも満員になる避難所があった。延岡市はコロナの感染対策を徹底するとして定員を設けずに受け入れていたが、8施設では午後5時ごろから混雑が目立ったため、近隣の別の施設を紹介するなどして対応した。
また、宮崎市佐土原町のホンダロックでは社屋を避難施設として地域に開放。13世帯23人を受け入れた。
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