迫る土砂、生活寸断 記録的大雨
2019年7月5日
九州近くに停滞した梅雨前線の活発な活動で県内に降り続いた大雨は4日朝、約1週間ぶりに上がった。雨雲の隙間から日差しがのぞく中、降水量の多かった県西や県南部の山間部では、土砂災害や浸水被害の状況が次々と明らかになった。県内で犠牲者は出なかったものの、自治体が発令する「避難勧告」や「避難指示」の伝達方法に違いがあることが判明。住民に防災意識を啓発する上で重要な課題となりそうだ。
集落の孤立、ひび割れて波打つ道路―。県内の山間部では、地盤の緩みが原因とみられる被害が次々と判明。斜面が崩れ落ちた道路では復旧を急ぐ重機のエンジン音が響いた。梅雨はまだ続いており、住民の間では「また崩れるのではないか」と早い復旧を願う声が上がった。
都城市山之口町山之口では飛松地区に通じる市道ののり面が崩落し、5世帯12人が1日から孤立状態となった。同地区自治公民館の安田洋一館長(64)は「集落から外に出られなくなり、仕事を休まなければならなかった」。
現場では4日午前8時ごろから重機による土砂の撤去作業が始まった。地元の山之口小の教諭も訪れ、「1年生1人が地区に残っている」と作業を見守っていた。同市によると、同日午後5時15分になって片側通行ができるようになった。
同市鷹尾1丁目の自動車整備工場「二見自動車」は、近くの用水路からあふれた水で膝下まで浸水した。午前8時から従業員ら4人がほうきで水をかき出す作業に追われた。
二見信市社長(64)は「こんなに激しく降り続けたのは初めて。また浸水すれば、会社自体を続けられるか心配」と漏らした。
串間市市木では高さ約60メートル、幅約50メートルにわたり山肌が崩壊し、大量の土砂が国道448号を埋めた。付近では2017年6月に地滑りが発生。国道は通行止めが続いており、度重なる土砂崩れで復旧はさらに延びそうだ。
近くの舳(へた)地区の住民は道幅の狭い迂回(うかい)路を使っており、離合できない場所もある。同地区の磯崎義孝自治会長(64)は「地区には高齢者が多く、救急時の対応の遅れが懸念される。早期復旧をお願いしたい」と訴えた。
6月28日からの総雨量が多かった日南市吉野方では、広域農道が約20メートル以上にわたり陥没していることが分かり、全面通行止めとなった。地盤の緩みが原因とみられる。道路の土砂が流出したせいか、アスファルトの路面には無数の亀裂が入り、あめのようにぐにゃりと曲がっていた。
国富町宮王丸の向陽団地では、隣接する斜面が高さ約20メートル、幅約30メートル崩落。斜面上に止めていた軽乗用車1台も土砂にのまれた。
自治会区長の布施ひろ子さん(70)は「バリバリと大きな音がした。こんなに大きく崩れているとは思わなかった。今後の雨でさらに被害が広がらないか」と不安そうだった。
【写真】土砂崩れにより通行止めとなった都城市山之口町の市道。飛松地区が一時孤立状態となった=4日午前10時36分
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