津波避難、県民意識調査 自治体、一層の啓発へ
2019年1月25日
「この数字は低過ぎる」-。県内の沿岸10市町の住民を対象にした県民意識調査で、大きな地震発生時に早期に避難すると回答した人が37・9%にとどまったことが分かった24日、各自治体は調査結果を深刻に受け止めた。南海トラフ巨大地震に備えて啓発を図る中、命を守る早期避難の意識が浸透しない現状に強い危機感を抱き、取り組みを一層強化する姿勢を示した。
高鍋町の杉田将也総務課長補佐は「この数字は低過ぎる。重く受け止めなければならない」。同町は最大11メートルの津波が到達する想定でハザードマップを作成し、全戸に配布。避難訓練や出前講座の開催に加え、避難タワーなどの施設整備も進めてきた。杉田課長補佐は「東日本大震災から8年がたち、記憶が薄れている。住民に対する情報提供や避難訓練を通じて啓発したい」と気を引き締める。
県の被害想定で、県内最多の1万5千人の死者が出るとされる日向市。避難タワー6基、避難山1基を整備するなど対策を図ってきたが、同市内の回答者の「早期避難率」は41・5%。長友正博防災推進課長は「意識はまだまだ低い。避難タワーなどを活用し、いかに早く逃げてもらうかが重要。訓練や防災講話を継続して繰り返し、『自分の命は自分で守る』という意識付けを図りたい」と力を込めた。
南海トラフ巨大地震で宮崎市に次ぐ31・4平方キロメートルが浸水すると想定される延岡市は、35・6%と県全体の数字を下回った。「結果を分析し、市民の意識を高める取り組みを進めたい」と羽田克広危機管理室長。「避難しない」と回答した人の半数が、理由を「自宅の方が避難所より安全」とした点に言及し、「本当に安全かどうか、ハザードマップを周知し、市民の自助を支援する重要性を改めて認識した」と語った。
想定浸水面積が県内最大の40・1平方キロメートルに上る宮崎市も29・1%と低水準。日高俊郎危機管理課長は「市民の危機意識を高めるために、今後も早期避難の啓発に努める」と警戒を強めた。
宮崎大の原田隆典名誉教授(地震工学、災害学)は「南海トラフ巨大地震では死者の9割は津波によるものとされており、避難すれば犠牲を大きく減らせる。立っていられないような強い揺れが約30秒以上続いたら津波が来ると考え、注意報や警報の発表を待たず、すぐに逃げることが大切だ」と呼び掛けている。
【写真】南海トラフ巨大地震を想定した津波避難訓練で、一時避難所に指定された宮崎空港のターミナルビルに避難する周辺住民ら=2018年9月、宮崎
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