若い女将たちと一緒に温泉郷の活性化めざす
2019年04月06日掲載
仁科 睦子さん
『旅館伊藤』女将 『京町温泉みなほ会』 会長
温泉宿の女将として、経営から接客まで夫と二人三脚。一方で、京町温泉の女将たちと力を合わせ、地域の魅力を生かした商品開発やイベント開催にも取り組み、温泉郷の魅力発信に尽力しています。59歳。えびの市。
えびの京町温泉郷のすぐ近く、県内最古の温泉郷と言われる吉田温泉郷で創業108年。歴史ある『旅館伊藤』4代目の夫・博さんと2人で宿を切り盛りする、京町生まれの仁科睦子さん。同級生だった夫と結婚後しばらくは転勤生活でしたが、子育て面と、旅館業をしている義母の体力を考慮し、娘たちを連れて帰郷。旅館の仕事見習いを始め、6年後、夫も帰郷し旅館経営を引き継ぎました。
経営面はもちろん、「どんな宿でどうもてなすか」を2人で試行錯誤。その中で「地元の食材にこだわり、海のものは出さない」ことを徹底し、川魚や鹿肉、地頭鶏、地採れの野菜や山菜類で里山料理を提供しました。料理やもの作りが好きな仁科さんは、ユズこしょうやみそ、梅干しなども手作り。「義母から習ったり、教室に通ったりして覚えました。安心して提供できるし、お客様から『おいしい』と褒められると会話も弾みます」と、仁科さんは笑顔を見せます。
旅館業が安定する一方で、見送り後に「お客様はどう感じただろう。満足していただけたか」と気をもむことが増えました。数年前、親しい常連客にふとその思いをこぼした時、「『客全員が100%満足するなんてあり得ない。目の前の客を全力でもてなすだけ!』と言われて。それから気持ちがすっと軽くなりました」。迷いが吹き飛び、旅館の仕事をますます楽しめるようになったそうです。
そんな仁科さんのもう一つの顔は、京町・吉田温泉の女将6人でつくる『京町温泉みなほ会』の会長。手作りのアロマ入り温泉水せっけんを販売したり、浴衣イベントで100人集客するなど地元を盛り上げています。「京町、そして温泉の魅力を私たち自身も再認識しています。若い女将たちと一緒に温泉郷の活性化をすることが今の私の使命」と、これからも多彩な活動で注目を集めそうです。