「ありがとうキタサンブラック」の歌詞を手掛けた作詞家の山田孝雄さん=横浜市の自宅
日本中央競馬会(JRA)最多タイのGI7勝を挙げて引退したキタサンブラックをたたえる歌「ありがとうキタサンブラック」がファンの間で話題を集めている。歌詞を手掛けたのは、三股町出身で日本作詞家協会理事の山田孝雄さん(71)=横浜市。これまで競馬を題材にした歌詞をいくつも世に送り出してきたが、「今回が集大成になった」と感慨深げだ。
山田さんが競馬の歌詞を作り始めたきっかけは、「怪物」とも呼ばれた人気馬ハイセイコー。引退式(1975年)に間に合わせるよう、レコード会社から一晩で書くように言われて仕上げたのが「さらばハイセイコー」だ。歌手で妻の松原愛さんと知り合ったのも、この引退式だった。その後、同じ三股町出身でJRAの元調教師・橋口弘次郎さん(72)=滋賀県=と親交があったこともあり、「翔んでディープインパクト」「砂漠に咲いた花 ハーツクライ」など、競馬にまつわる歌詞を10曲以上作ってきた。
「ありがとう~」は、キタサンブラックが2015年のセントライト記念(GⅡ)で勝った際、レースを見ていた山田さんの頭に「逢(あ)えてよかった雪国で/俺はお前にひと目惚(ぼ)れ~」という歌詞が突然ひらめき、一気に書き上げた。馬主で演歌歌手・北島三郎さんとは歌手と作詞家として長年付き合ってきた仲。この歌詞を気に入った北島さんが、山田さんの了解を得て多少の手を加え、完成させた。
引退レースとなった17年12月の有馬記念(GⅠ)後に初披露。配信元の日本クラウンによると、その日のうちに約2千回ダウンロードされ、現在まで計約2万5千回を数える。同社は「演歌のダウンロード累計数は大抵3桁。『ありがとう~』の数は考えられない」と驚く。
山田さんは「今は下からはい上がって夢をつかむことが難しい時代。血統で劣るキタサンブラックがエリート馬に次々と勝つ姿は感動を呼んだのだろう。地方競馬からのし上がったハイセイコーに似ている。宮崎の育成牧場にも、そんな馬が出るかもしれないので頑張ってほしい」と話している。