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「満天白清」エース級へ 子牛の霜降り歴代最高値

2018年7月17日掲載

次世代を担う種雄牛として期待が高まっている「満天白清」(県提供)

 種雄牛の遺伝的能力をみる検定で、西都市鹿野田の和牛繁殖農家・楠瀬功(54)、美恵子(55)さん夫婦が生産した「満天白清(まんてんしらきよ)」から交配して生まれた牛の枝肉が、霜降りの度合いを示す数値で本県歴代トップの成績を記録した。肉質、重量ともに優れ、県有種雄牛の中でエース級になる可能性も秘める。2010年の口蹄疫で多くの家畜が犠牲となった西都・児湯地域から次代を担う種牛が出現したことに、畜産関係者は期待を膨らませている。

 県有種雄牛は県家畜改良事業団が能力を厳しくチェックして選抜。その精液が入ったストローは種付け用として農家に供給される。満天白清は13年7月21日生まれで、口蹄疫で殺処分された本県の伝説の名牛「安平」を父に持つ。母の父は岐阜県の「白清85の3」、母の祖父は本県の「福桜」という血統。同事業団がその素質を見いだして生後約6カ月で買い上げ、56頭いる県有種雄牛の1頭として飼養されている。

 全国和牛登録協会が6月に行った検定では、満天白清の子牛12頭(去勢)を月齢約28カ月で食肉処理。サシの入り具合を12段階で評価する脂肪交雑基準(BMS)の平均値は、歴代エース牛を上回る過去最高の10・3。肉質等級は全12頭が最高の5等級で、枝肉重量は525キロだった。

 昨年9月の全国和牛能力共進会「肉牛の部」の8区では、満天白清の子牛(3頭一組)が最高賞の内閣総理大臣賞に輝いており、今回の検定結果でその実力が裏打ちされた。県畜産振興課は「名牛・安平のように活躍し、宮崎牛の次の世代を担う牛になってほしい」と期待を寄せる。

 「満天-」のネーミングには、楠瀬さん夫婦の特別な思いが込められている。29万7808頭の命が失われた8年前の口蹄疫。ワクチン接種の区域外だった楠瀬さん夫婦は牛の殺処分こそ免れたが、知り合いの農家を含め地域からほとんどの家畜がいなくなり悲しみに暮れた。

 功さんは、その夏に満天の星が輝く夜空を見上げ、「犠牲になった30万頭の魂が輝いている。苦しんだ県内の農家に喜んでもらえる種牛を、この地域から出して恩返しをしよう」と決意。特別に血統の良い雄牛が生まれると、「満天-」と名付けるようになったという。

 美恵子さんは「最高の結果が出たのも、多くの繁殖、肥育農家の協力と努力のおかげ。種の供給が本格化するのはこれからで、地域に貢献するためのスタート地点にようやく立てた」と喜びをかみしめている。