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日向灘の奇岩、謎解明へ 吉田・名古屋大教授(延岡出身)

2019年3月24日掲載

鵜戸神宮周辺の壁面から幾つも飛び出している炭酸塩球状コンクリーション。観光客の注目を集めている=日南市・鵜戸神宮

 海に面した崖から突き出した大きな丸い岩や、波風に洗われた岩の上にバランスを取るように乗っかっている奇岩。日南市・鵜戸神宮で見られる光景は奇妙さを通り越して神秘的にも映る。岩の正体は、太古の日向灘に息づいていた動物の死骸からできた「炭酸塩球状コンクリーション」という炭酸カルシウムの固まりだ。生成の過程は長年謎に包まれていたが、世界のコンクリーション研究の第一人者として知られる延岡市出身の名古屋大・吉田英一教授(環境地質学)らによって解明されようとしている。

 海に面した同神宮では宮崎層群の砂岩の岸壁から、コンクリーションが大きな“いぼ”のように飛び出しており、恐竜の卵のようにも見える。目を奪われる観光客も多いが日向神話よりもっと昔の800万年前に形成されたことを知る人は少ない。

 吉田教授によると、海底でナマコやクラゲなどの生物が腐敗して放出する炭素と海中のカルシウムイオンが反応して、炭酸カルシウムの石を形成する。砂や泥を取り込みながら、風船が膨らむように大きくなる。

 沈殿と隆起を繰り返して砂岩層に閉じ込められ、やがて周りの砂岩が川や海で浸食されて地上に現れる。ほとんどが5千万~150万年前に形成されており、中心には生物がほぼ原形のまま化石となって残されているものもある。

 形成の過程は数十万~数百万年かかると考えられていたが、炭素とカルシウムイオンの反応の速さから、数カ月~数年で形成されることが昨年明らかになった。その論文を発表したのが吉田教授のチームだ。

 国内で発見された約50地点のうち本県が10地点を占める。場所は海沿いは日南海岸から都農町名貫川まで。内陸では都城市高城町でも見つかっており、「都城盆地がかつては海の底だったことをうかがい知ることができる」(吉田教授)。宮崎市田野町の河川工事現場では国内最大級となる直径約1・2メートル、重さ約2・5トンのコンクリーションが発見された。

 吉田教授は「これだけ広範囲かつ幅広い年代を持つコンクリーションが見つかる地域は珍しい。足元の故郷にこれほどのものがあったとは」と価値の高さを説明する。

 コンクリーションは時間がたつほど強度が増し、風化しにくくなる。吉田教授は頑丈さが求められるトンネルの建設や、コンクリート建造物の補修などに活用する方法のほか、人工コンクリーションの製造研究も進めている。

 吉田教授は「将来はメンテナンスフリーの建築資材を開発できる」と期待を込める。人類誕生よりずっと昔から届いた“タイムカプセル”と、本県出身の吉田教授の研究が未来を照らし出そうとしている。