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俵万智さん 移住後初の歌集 ”宮崎生まれ”作品多数

2020年8月10日掲載

「(移住した)宮崎を新鮮に見ていた時の歌が収められている。今ではすっかり慣れましたけど…」と笑う俵万智さん=宮崎市・宮日会館

 宮崎市の歌人俵万智さん(57)が、本県に移住して初めてとなる歌集を出版する。角川書店から9月末の発行を予定し、タイトルは「未来のサイズ」。本紙で連載中の「海のあお通信」が初出の作品を含め、”宮崎生まれ”の短歌が多く並ぶ。俵さんは「宮崎の豊かな日常をあらためて感じてもらえるきっかけになればうれしい」と話している。

 「未来のサイズ」は「オレがマリオ」以来7年ぶりで第6歌集となる。約400首を収め、前に住んでいた沖縄県・石垣島で詠んだ作品と、2016年に本県で暮らし始めてからの作品で構成される。新型コロナウイルスに揺れる日常を詠んだ新作も収められる。

 タイトルは収録作〈制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている〉から取った。「息子の中学の入学式で大きな制服を着た生徒たちを見て、どの子もそのぶかぶかの分、成長していく『未来』を持っていると感じた」と俵さん。歌集には子どもが見せてくれる世界や、本県での暮らしがいきいきと描かれ、冷や汁、地頭鶏(じとっこ)などの言葉も詠み込まれている。

 本紙で月1回掲載の「海のあお通信」からは、〈「だれやめ」は「疲(だ)れ止(や)め」と知る居酒屋に迷わず頼む「だれやめセット」〉など数首が登場予定だ。

 このほか政治風刺や2014年の韓国の旅客船セウォル号沈没など題材は幅広い。「これまで政治の歌はスローガン的になるのではと考え一歩引いていたが、子育てを通し社会への関心や未来を心配する気持ちが強くなったと思う」という。

 コロナ対策で外出を自粛し自宅で過ごす日々も詠(うた)われる。「歌は心が揺れたとき生まれる。コロナ禍で日常が脅かされ、非日常も今では日常になった。その中でできた歌を入れたことで、石垣や宮崎での穏やかな日々から生まれた歌がよりいとおしくなった」と歌集への思いを語っている。

 俵さんは第1歌集「サラダ記念日」がベストセラーに。第4歌集「プーさんの鼻」で若山牧水賞を受賞している。