松田儀四郎さんが育てたジャカランダを見上げる妻のタヅ子さん。今年も紫色の花を咲かせ「遺志を継いで大切にしたい」と話す
日南市飫肥地区の広域農道黒潮ロード沿いにあるミカン畑で、ジャカランダの樹木2本が今年も美しい紫色の花を付けた。2012年に亡くなった同市飫肥の松田儀四郎さん(享年62)が20年ほど前に植えて育てたもの。現在、花の数は以前と比べて減ったが、それでも妻のタヅ子さん(65)は「ジャカランダを心から愛していた夫の形見」と、大切に管理を続けている。
タヅ子さんによると、儀四郎さんは同市南郷町の県総合農業試験場亜熱帯作物支場に勤め果樹担当をしていたが、支場が管理するジャカランダの花の美しさに感動。群生するジャカランダが現在ほど有名ではなかったころで、儀四郎さんは「生まれ育った飫肥は、泰平踊の着物の色など紫色のイメージが強い。飫肥にジャカランダを広めたい」と個人で苗木の育成を始めた。年に50本ほどを育て、欲しい人に無償で分け与え続けた。
また、自身が所有するミカン畑にも6本を植栽し育成。しかし台風の影響をまともに受け、残ったのは2本だけだった。2本は10メートル以上のものと、約5メートルのもの。この時季、多くの美しい花を咲かせ、通りがかったドライバーが車を止めて観賞する姿も見られるという。
タヅ子さんはジャカランダへの肥料やりや除草など管理を行ってきた。10メートル以上の木は以前は上から下まで花を付けていたが、枝が折れたため今年は上部のみだという。
知人からは「台風の影響を受けない、もっと人の目に触れる場所に移設をしては」と提案を受けたが、タヅ子さんは「人に喜んでもらおうと植えた夫の形見」として、儀四郎さんが植えた場所から動かすつもりはない。
タヅ子さんは「市内にはジャカランダをもっと増やそうと、夫と同じ思いで活動している人がいると聞き、とてもうれしくなった。私も2本の木がいつまでも花を付けるように見守っていきたい」と、目を細めながら見上げていた。